長い夜の始まり

05


 頭、グチャグチャになるでしょ?
 六花自身も感じたことのある感覚。躯の中を誰かに掻き回される違和感。

 優しい口調で話しかけながら、六花は遊糸の頬を撫で続けた。遊糸の双眸から、理性の光が再び弾けて消える。

 細い指が、縋るように父の背に回される。

 突き上げるようにして開始されるピストン。ぐちゅ、ぐちゅ、と卑猥な水音が耳を犯した。

「ひぁ、あ、っぁ、や、あっ…っひンっ! ゃ、あ! ぁ、あぁッ!」

 ヒクヒクと遊糸の躯が震えて、開いたままの唇からは涎と嬌声が止め処なくこぼれ落ちる。

「あぁ、遊糸、いいよ…遊糸、愛してる…愛してる…」
「ん、む…っ」

 ちゅぱ、ちゅぱ、と音を立てて唇をついばみ、そして深く口付ける。舌を吸い出してはぺちゃぺちゃと犬のように舐め、互いの唾液を掻き混ぜては全て遊糸に飲ませていく、父。
 六花は微笑みながら、その様子を見守る。

 父の最愛の息子は、遊糸なのだ。
 17年間想い続けたその最愛の息子と、ようやく繋がってひとつになって、抱き合って溶け合って。

 残念なことに愛し合ってはいないようだが、薬を大量に使ったお陰でほとんど遊糸には理性も正気も残っておらず、父はその残酷な事実に気付かずにいられている。

 もしくは、敢えて目を瞑るために薬を使ったのか。それとも、気付いていてなお、こうして恍惚として息子を犯していられるのか。

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