蝉の鳴く並木路を、青年はいく。
じりじりと身を焼くような暑さに汗が頬を伝い落ちる。

遠くを見ているような定まらない目でふらふらと歩き続ける青年は、果たしてどこに向かっているのか。

ふと、青年は足を止めた。
数瞬後には我に返ったのか目に輝きが戻る。

ここはどこだ、青年は思考する。
気がつけばそこはいつもの並木路ではなく、長い柱がいくつも並ぶ薄暗い空間だった。

見上げた頭上は、柱が闇に吸い込まれるほど高い。

 青年は寒気を覚えた。
つい今しがたまでは暑さに朦朧としていたというのに。
とにかく戻ろうと青年は踵を返した。

今日はあの子と約束をした日なのだ。

違えたらどうなることか…末恐ろしい。
しかし青年は足を止める。
止めざるを得なかった。
青年は気づいたのだ。

どのようにして此処に辿り着いたかも分からないのに、どうして出ることができようか。

青年は途方に暮れた。
あの子が待っている。

引き返しても仕方がないのならとりあえず進もうかと、青年は決意する。

青年は歩き出した。

 青年の靴音がこだまする。
それ以外にはなにも聞こえない。
青年は目をこらし、耳をすませた。

何者も、何音も逃さないように。

世界は依然、薄暗い闇を纏ったまま一向に景色をかえる気配はない。


唐突に、鈴の音が青年の耳に届いた。


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