木偶の少女 | ナノ
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出られないC



【出られない部屋シリーズ】
連載の時系列ばらばら。
ネタを思いつき次第ふやします。
ツイッターでつぶやいたものもあります。
むしろリクエストください。



■お互いに料理を作ってあげないと出られない部屋(リクエスト)

「『お互いに料理を作ってあげないと出られない部屋』?」
「な、何のために……」
扉に書かれた文字を二人で読み上げる。白い部屋には、キッチンだけが存在していた。
「まあいいや。さっさとすませよう」
あっさり受け入れたカルマ君に動揺する。彼はすぐさま流し台に向かうと、並んだ食材を一つ一つ手に取って確認していた。
彼の隣に並ぶ。一緒になって覗いた野菜は瑞々しく、パック詰めされた物は未開封だった。毒が混入している様子はなさそうだ。
「ていうか俺、料理できないや。簡単なのでいい?」
「うん……というか私も、そんなにしないし……」
「そうなんだ?」
意外そうな顔をされ、緊張する。もしかしたら女子らしくないと幻滅されたかもしれない。
「ごめん……」
「ん?なんで」
「えっと、……ううん、まず、作ろうか」
自分の不安を上手く伝える自信がなくて、まずは目の前の問題を解決しようとした。カルマ君は納得していないようだったけど、とりあえず同意してくれたらしく、料理に取り掛かる準備を始めた。
「何作る?」
「早く作れるのが……いいかな?」
「おにぎりとか簡単かと思ったけど、米炊くの時間かかるか」
「卵焼きとか、どうかな?」
「いいね。じゃあ俺スクランブルエッグ作るわ」
二人して卵料理というのがおかしかったけれど、得体のしれない場所を早く出てしまいたい気持ちが勝った。並んでコンロの前に立ち、卵を焼き上げると、用意されていた皿に盛りつけて互いの前に置く。
「まさかこんな形でなまえの手料理食べることになるなんてね……」
少しがっかりしたように言うので、ドキッとする。
「ご、ごめん」
「だからなんで謝るの」
「えっと……、料理できないって、彼女失格かなとか、思って……」
今まで思いつきもしなかったけれど、普通彼女は彼氏に手料理をふるまうものなのかもしれない。こんな場面で初めて思い至った自分が情けなくなった。
「彼女失格って言葉好きだよね、なまえって」
「え?」
「しょっちゅう使う」
「嘘……そんな使う……?」
「この前も言ってたよ」
「いつ?」
「デートの最後で俺が熱あるのに気づいたとき」
「だ、だってあれは私ホントに――むぐっ」
「はいはい、卵冷めるから食べようね」
無理やりスクランブルエッグを口に詰められ、言葉ごと飲み込まされた。不満げな目を向け訴えるけど、彼はすぐに卵焼きへと視線を落とした。
「俺もいただきます」
丁寧に箸で運ばれる卵焼き。彼が口に含む瞬間まで、ドキドキしながら見つめていた。咀嚼する間、一言も発さないので不安になっていると、飲み下したらしい彼がゆっくりと声を出した。
「なまえの家の卵焼きって、だし巻きなんだ?」
「えっ……うん」
好みに合わなかったのかもしれない。悲しい気持ちになっていたら、背後で鍵の開く音がした。あっ、と振り返ると、不意に気配が近づく。肩に乗せられた手と、耳元に寄せられた唇。
「これが俺らの家庭の味ってやつになるんだね」
身構える間もなくささやかれた言葉を、すぐには飲み込めなかった。呆けているうちに、次の卵焼きをつまんだ彼が、「俺んちは砂糖入れるんだよね」と世間話のように呟いた。平然と食事を続ける彼を見ている内に、かけられた台詞の意味が、だんだんと脳髄に浸透していった。
今のは、つまり、結婚とか、そういう……。
徐々にあがる体温が、顔に集まる。頬を押さえてうなだれかけたら、あごをすくいあげられ、またスクランブルエッグを口に詰められた。
「おいしい?」
「う、うん」
何度もうなずくと、カルマ君は満足げに微笑んだ。
「でしょ?だし巻きも好きだけど、たまには砂糖のも作ってね」
「う…………う、うん。作る……」
「よろしくー」
カルマ君はやたらとご機嫌に笑うと、最後の卵焼きを口の中に放り込んだ。



■10分間キスしないと出られない部屋(リクエスト)

 壁に書かれた『十分間キスをしないと出られない部屋』の文字。「なんだ余裕だね」と呟けば、彼女がぎょっとした顔でこちらを見た気配がした。
「む、無理だよ」
「何が?」
「十分も、キ、キスなんてしたことないし」
「あんた最近息継ぎ上手くなってきたし、できると思うよ」
 顎をつかんで上を向かせる。一瞬で赤く染まった肌がおかしくて、くつくつと笑い声がこぼれた。そのせいで彼女はからかわれていると感じたらしく、困ったように眉尻を下げた。
 懐かしいなこの感じ。こっちは本気なのにまったく伝わらないんだよね。
「ほら、さっさと帰ろう」
 彼女の横髪を耳にかける。角度をつけて顔を近づければ、教え込んだ甲斐もあり、反射で目を閉じた。
 十分かけるなら、せっかくだからいつもより焦らしてみよう。こうして機会を与えられると、最近は少し駆け足だった気もするし。一人でに決定し、おもむろに唇を重ねた。しかしすぐに離して反応を見る。いつもと違う動きに困惑した彼女が目を開けたところで、またすぐにキスをした。
「んっ」
 何か言いかけたらしいが、不意打ちの動きのせいで声にならなかった。今度は距離を取らず、唇を押し当て続ける。状況に緊張しているのか、力が入っているのがわかる。ほぐしてやるつもりで肩を撫でると、びくりと跳ねた。
「……せっかくだし復習する?」
「な、に?」
「中三の英語の授業」
 言わずもがなビッチ先生のキステクのことである。察した彼女はますますうろたえた。慰めるようにまぶたへ口づけを落とし、肩から腰へ手をすべらせる。
「ほら、最初はどうするんだっけ?」
「も……覚えてないよ……」
「じゃあ、なおさらちゃんとやらないとね」
 腰を引き寄せ、再び顔を覗く。赤くなって震える彼女に至近距離で微笑む。
 唇を押し当てて、今度は挟みこむようにした。弄ぶようにひっぱったり、軽く舐めてみたりした。翻弄されるまま受け入れる彼女が、すがるように俺の服をつかんだ。それでなおのこと気分がよくなる。彼女が恥ずかしそうに口を開いた。普段ならここで舌を差し込むけれど、まだ触れてやらない。
「か、カルマくん……」
「んー? 何?」
 わざととぼけた声を出すと、彼女の目が泣きそうに細められる。後頭部を撫でてやりながら、顔を傾けキスをする。
 まだ少し緊張の残る硬い唇をほぐすように食んでいると、とうとうあふれた涙が頬をつたった。
「いじわる、しないで……」
 とろけた表情と声に、ぐっと熱が高まった。
「……煽るのうまくなったじゃん」
 お望み通り舌を入れてやる。まだ焦らそうと少しだけ触れるつもりが、彼女の方から積極的に絡めてきた。ひどく拙いが、懸命に奉仕しようとする気概が感じられた。この状況で少しでも貢献したいと考えているのだろうか。愛しさが弾けそうになる。
 彼女の頑張りに答えてやろうと、舌先をくすぐり、飲みこむ勢いで吸い込んだ。上顎を撫ぜてやったり、歯ぐきをなぞったりもした。中学時代の遺産に頼るつもりはないが、ビッチ先生にたたき込まれたテクを全て使ってやる。彼女の体が時おり震えて、立っているのが辛そうだった。
「んっ……ふ……」
 だんだん追い詰められていることが、手を取るようにわかった。鼻に抜ける甘い呼吸と、粘着質な水音が大きくなっていく。
 いつしか俺も余裕を失っていたらしく、焦らすことをすっかり失念していた。貪るキスを止められず、体の中心に熱がこもる。わずかな距離がもどかしく、わき腹を撫でていた手を無遠慮に服の中へ滑り込ませた。
 あーやばい。止まんない。
 彼女の力が抜けたせいか、唇も舌もやわらかい。熱で溶けて境目があやふやになり、頭が少しも働かない。
 床はさすがにちょっとな……。壁際に押し付ければ、どうにかできるかな……。
 次のステージへ進むための算段を付け始めた脳が、彼女を壁へ追い詰めるように指示を出す。素直に従い両肩に手をかけようとしたとき、彼女が思い切り胸を押し返した。
 無理矢理に開かれた距離。驚き彼女を見おろすと、顔を真っ赤にして、肩で息をしていた。
「あ、あいた」
「え?」
「ドア、鍵の音、したよ」
 彼女が手の甲で口をおさえながら指さした。そちらを見れば、たしかに扉のロックが解除されている。
「あーほんとだ」
「か、帰ろう?」
 彼女はよろよろと俺から離れる。まだ耳まで赤いくせに、一人で立とうとした。
 なんだよ、急に冷静になっちゃって。自分ばかりが興奮していたようで面白くない俺は、意趣返しのつもりで彼女の耳に指をかける。
「十分、あっという間だったね」
「……っ」
 撫ぜながら、彼女をじっと見つめる。自分でも熱の籠もった視線になっていることは想像がついた。
「……ここから出たら続きしたい」
 もっと意地の悪いことを言ってやるつもりだったのに、思っていたより余裕のない声になった。なんとなくばつが悪くて、隠すように彼女に近づく。耳元に直接吹き込むように「だめ?」と甘えた声を出した。
「……い、……いいよ」
 観念したように彼女がつぶやく。俺はにやりと笑って、最後に耳にキスをした。完全に油断していたらしい彼女が「ひっ」と短く悲鳴をあげた。俺はそれを小さく笑うと、まだ濡れているその唇を親指でぬぐってやった。







■喧嘩しないと出られない部屋
■相手が思ってることをあてないと出られない部屋
■指を一本ずつ舐めないと出られない部屋
■3000ピースのジグソーパズルを完成させないと出られない部屋
■どちらかが(なんかすごいゲテモノ)を食べないと出られない部屋
■七日間、ベッドが一つしかない部屋に閉じ込められる
■服を脱がさないと出られない部屋
■キスされないと出られない部屋(片方しかしらない。知っている人は「好き」しか言えない)(リクエスト)