ここほれわんわん | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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膝を抱え込んで、額を乗せた。そうしたほうが、吸い込む空気が、少なくてすむ気がしたのだ。トラッシュルームにいることは、とても息苦しいけれど、絶対にその場を離れる気はなかった。

私は息を潜めて、全神経を耳に集中させた。人の気配がした瞬間、すぐに反応できるように。だけど実際は、記憶がおぼろげで、もしかしたら私は眠っていたのかもしれない。長いことその場で微動せず、体育座りのまま瞑想していたから、どれぐらいの時間が経ったのかさえ分からなかった。

意識が覚醒したのは、何かがぶつかりあう金属音がしたからだ。勢いよく顔をあげると、先ほど霧切さんと覗いた、地下に続くハシゴの扉が軋んでいた。やがて中からぐっと押し開けられた扉の蓋が、地面から垂直になったところで止まる。

私はその光景に見入っていた。中から顔を出した苗木くんが、こちらを振り向くまで、ただ、ひたすらに。目が合った彼が、息を呑む音を聞いて、私も初めて、自分の呼吸を思い出したのだ。

「みょうじさ……」

前のめりになって、身を乗り上げようとした苗木くんは、焦りのあまりハシゴを踏み外したようで、肘を強く縁にぶつけた。その痛みに顔を歪めながらも、怯む様子なく、よじのぼってきた。私は自分の骨が小気味よい音を立てるのを聞いた。ずっと縮めていた身を、いきなり動かしたせいで、強張っていた体が悲鳴をあげたのだ。だけどそんなこと、全く気にならない。衝動に突き動かされるまま、まだ体勢も整っていないところに勢いよく抱きつくと、素っ頓狂な声があがった。彼は尻もちをついてしまったけど、なんとか私を受け止めてくれた。尻もちをついた状態の苗木くんに、しがみつくようにすがる。

「な、苗木く……」

声が掠れた。苗木くんが私の背中に手を回そうとして、躊躇うように引っ込めた。

「みょうじさん、だめだよっ、ボク今すごく汚いし……ほら、匂い苦しいでしょ?」

私を引きはがそうとする苗木くんは、確かにトラッシュルームの匂いが染みついていた。だけど私は彼に抵抗するように、ますます抱きしめる力を強くする。首を思い切り横に振って、彼に額をこすりつける。背中に回した手を強く握りしめたせいで、彼の制服がしわになっているかもしれなかった。

「そんなの、どうでも、いい……私、もう、後悔したくない……」

涙がぼろぼろとあふれ出るのを止められない。苗木くんの制服を濡らして申し訳ないと思いながらも、離れたくない気持ちが勝ってしまう。

「苗木くんがいなくなって、本当に、嫌だったの!お願いだから、もう、どこにもいかないで……っ」

「そ、それって」

ぎこちない動作で彼が私の背に手を回そうとした時、パンパンっと手を叩く音が傍で響いた。途端に支えられていた体が思いきり突き放され、苗木くんの真っ赤な顔が視界に入った。彼はすぐに起き上がってきょうつけする。制服の埃を叩き落とす霧切さんの前に固まっていた。

「……いいかしら?」

「ご、ごめん……っ!」

あくまで冷静な彼女の言葉に、苗木くんが勢いよく返事をした。私は呆けたままへたり込んでいたけど、自分が口走った言葉たちを思い出し、首からじわじわと熱がのぼりつめるのを感じた。

このまま逃げ出したい衝動にかられたのだけれど、苗木くんに手を差し伸べられて、そうもいかなくなった。彼の手を借り、おずおずと立ち上がって、誰とも視線を合わせられずに、項垂れた。

「まったく長いハシゴだったわね……。お陰でクタクタよ」

「霧切さん、あ、ありがとう。おかげで助かったよ……!」

苗木くんがうろたえながらお礼を述べる。対する彼女は表情すら動かさず、「礼なんていらないわ。私は借りを返しただけだから」と答えた。

それきり沈黙が訪れそうになり、気まずい空気が嫌な私は、必死に言葉を探した。けれど、うまい言葉が出てこなくて、涙をぬぐってごまかしていたら、苗木くんが「これからどうすればいいかな」と不安げに問いかけた。処刑を覆したことで、霧切さんにまで危険が及ぶことを心配しているようだった。しかし彼女は堂々とした様子で「心配?だったら、直接確認して見ましょうか」と答えた。

「直接?」

私の疑問に、彼女はなんでもないことのように「モノクマに聞いてみるのよ。苗木君が逃げたのがマズイのかどうか」と答えた。トラッシュルームの監視カメラを指差して、「どうせ隠れても無駄なんだから」とつぶやく。

「でも、今度こそ本当に殺されちゃったら……」

「大丈夫よ。あなたたちが心配しているようなことにはならないわ。だって、追い詰められているのは黒幕の方なんだから」

言いながらトラッシュルームを出る。私と苗木くんは顔を見合わせ、慌てて彼女のあとを追った。

「それ、前にも言ってたけどさ……どういう意味なの?」

苗木くんが尋ねる。霧切さんは振り返らずに先を進みながら答えた。

「あの戦刃むくろの学級裁判で、黒幕は自ら露呈してしまったのよ。黒幕自身の……付け入る隙をね」

そこからの質問には、「モノクマに会えばわかる」と取り合ってくれなかった。こちらから、モノクマに会うことが交渉を有利に進める材料になるらしく、霧切さんは「急ぎましょう」とだけ言った。

寄宿舎を抜け、学校エリアの廊下を進み、モノクマがいるであろう一階の体育館を目指した。

体育館につながる、重たいスライドドアを開くと、三人が足を踏み入れた途端「おやおやおやおやおやおやぁッ!!」という声がした。

振り返るとモノクマが暗い表情で立っていた。怒りを隠そうともしていない顔色に、恐怖を覚える。

「霧切さんとみょうじさんはいいとしてと……だ。なんで処刑されたはずの苗木くんが一緒にいるんだよッ!?」

苗木くんはたじろいで、不安げな視線を霧切さんの横顔へと送っていた。彼女は涼しげな表情を崩さず、腕を組んだままモノクマを見下ろす。

「せっかくオシオキしたのに助けちゃったの?」と憤慨するモノクマに、霧切さんは「だったらどうするの?」と静かな声で問いかけた。

モノクマが校則に則ってオシオキをやり直すと主張するので苗木くんは真っ青になって、「霧切さん!」と嘆いた。私も思わず苗木くんを守るように前に出る。しかしそれでも彼女の感情は動かず、「……好きにしたらいいんじゃない」とまで言いのける。裏切られたような心持ちで、苗木くんと私が目を剥いたのは同時だった。

「そんなのダメだよ!!」

私が叫ぶと、霧切さんはうっとおしそうに髪をかきあげた。こちらは振り向かず、モノクマに向かって「だけどその前に、一つだけ言っておくわ」と前置きする。

彼女は、もう一度苗木くんを処刑することは、黒幕の負けを認めることだと主張した。あの学級裁判はモノクマが、邪魔な霧切さんをあぶり出して殺すために仕組んだものだった。つまり、本来ならあの学級裁判で殺されるのは自分だったはずだという。

目に見えてうろたえるモノクマを見ながら、構わず続ける。

「だけど、その思惑は見事に外れた。苗木くんが私の矛盾を見逃してくれたお陰でね。その結末は、あなたにとっては予想外だったはずよ……。あの場面で他人をかばう人がいるなんて、あなたには想像もつかなかったでしょうから」

予想外の展開に、モノクマは苗木くんをクロとして処刑することを余儀なくされた。それは苦し紛れの選択であると同時に、モノクマが思い通りに動かない苗木くんを脅威に感じていた証拠だと、霧切さんは説明する。

「だけど、そこでも予想外の展開が、あなたを待ち受けていた」

「アルターエゴ……」

苗木くんがぽつりとこぼす。霧切さんは勝ち誇ったように口の端をつりあげた。

「あなたにとっては誤算だったわね。死んでもなお、誰かを助ける存在があるなんて。……これが真実よ。戦刃むくろを殺したのは、苗木くんじゃなくて、あなただったのよ」

言葉とともに、まっすぐに指差した霧切さん。私はそれにつられ、ピクリとも動かなくなったモノクマに視線を向ける。

苗木くんを処刑したことは、校則違反にあたると霧切さんが締めくくった。クロが処刑されるのは、クロを正しく指摘できた場合のみなのだから、と。

「……言ってくれるじゃん。本当のクロは、苗木くんじゃなくてボクだって?……で、その根拠は?」

「ないわよ、根拠なんて」

「えぇっ!?」

自信満々に、はっきりと答えた彼女に、また驚かされた。モノクマは当然怒ったけど、時間さえあればすぐに見つけられると、落ち着き払った声が語る。

「もし、苗木くんが犯人だったら、わざわざあなたの前に現れたりしないわ。人を殺した罪に怯え、処刑される罰に怯え、もっと悲惨に逃げ回っているはずよ。あなたの好きな絶望に蝕まれながらね……」

霧切さんは伏せていた目を、睨みつけるようにモノクマに向けた。

「だけど私たちはここにいる。希望を失わずにあなたに立ち向かっている」

自分たちからモノクマに会いに行った方がいいと、霧切さんが言っていたのを思い出し、鳥肌のたった腕を抱きしめる。

歯ぎしりをしたモノクマは、そんな根拠じゃ納得できないと折れなかった。しかしそれすら見越してたように、霧切さんは顔色を変えずに問いかけた。

「確かにあなたは納得しないでしょうね。だけど……これを見てる人たちだって同じよ。このまま苗木くんを処刑しても納得しないはず……」

「見てる人……?」

繰り返したのは私だけだった。しかし苗木くんも状況を理解できていないらしく、霧切さんとモノクマを交互に見ていた。

「このまま苗木君を処刑したところで、これを見てる人達から、こう思われるだけよ。私達の言葉が図星だったからこそ、あなたは彼の処刑を強行したんだって。『“絶望”では“希望”を殺せないんだ』って……」

霧切さんはよどみなく言葉を紡ぎ続ける。モノクマは威嚇するように爪をギラつかせるけど、反論することはできないようで、ぐっとこらえていた。

「あなたが“正々堂々”と私達を絶望させたいなら、私の“提案”を受けるべきなのよ……」

モノクマは、長い間をおいた。それからやがて、覚悟を決めたように「…………それで、なんなのさ。その提案って……?」と口を開いた。

「もう一度、戦刃むくろ殺しの学級裁判を、やり直すのよ。今度こそ、校則に基づいた公平な裁判をね……」

戦刃むくろを殺した黒幕――その正体を明らかにする裁判を行い、今度こそ公正なジャッジを下そうというのだ。

クライマックスにふさわしい、希望と絶望をかけた勝負だと霧切さんは言ったけれど、私は不安で仕方がなかった。残虐なやり方をしてきた黒幕が、そんな話を受け入れるとは思えなかったのだ。

しかし意外にもモノクマは乗り気だった。キャラに飽きたからと語尾に「クマ」をつけて喋り、「まぁ、そういう展開もありかもしれないクマ。確かに、クライマックスにふさわしいクマ」と言った。

「……受けるって事?」

「そうすれば、キミタチも視聴者も納得なんでしょ?納得した上で、絶望してくれるんでしょ?だったら、やってやるクマ!キミたちの“希望”が勝つか、ボクの“絶望”が勝つか……最後の勝負をするクマー!」

潔く宣言したモノクマは、監視カメラに向かって諸手を挙げた。まるで向こう側にいる視聴者を挑発するような態度だった。

「私たちが勝ったらここから出られるの?」

とっさにそう質問すると、モノクマがこちらを振り向いた。

「そうだねぇ、そういう展開もあるかもね。……だけど、せっかくのクライマックスなんだし、単に犯人を当てるだけじゃ盛り上がらないクマ?だから、最終対決にふさわしく、キミたちにはすべての謎を解いてもらおうかなー!」

「すべての……謎?」

不安げな顔つきになった苗木くん。モノクマは口元に両手をそえて、体を震わせるように笑う。

「この学園に潜むすべての謎だよ。それを解き明かす事が出来たら……キミタチの勝ちってことにしてやるクマよ!」

「こっちだって最初からその気よ」

霧切さんだけが好戦的に答えていた。私はただ、その場にまっすぐ立っているだけで精一杯だった。

「じゃあ、決定クマ!!戦刃むくろを殺した犯人と、その犯行を突き止め、なおかつ、学園の謎を解き明かす事が出来たら、キミタチ全員の勝利を認めましょう。ただし、それが出来なかった時は……」

「私達全員が処刑……ね?」

モノクマの赤いほうの目がギラリと光った。喉を鳴らして笑うだけで、肯定はしなかったけど、そのつもりであることは明らかだ。

全てを知った私たちが、どんな絶望を見せるのかと期待するモノクマに対し、霧切さんは、すべてを解き明かされた【超高校級の絶望】がどう絶望するのか楽しみだと返した。バチバチとにらみ合いが続くかと思われた時、ふと霧切さんが笑みを消し、真顔で問う。

彼女は「一つだけはっきりさせておきたい」と前置きし、以前モノクマが、学級裁判が行われるのは、生徒間での殺人が起きた場合のみだと言っていたことを確認していた。モノクマはこれに「すべては校則に基づいて起きたこと」だと返す。つまり、戦刃むくろの学級裁判が開かれたことも、例外ではないのだということを補足する。

それじゃあ、戦刃むくろを殺した犯人って……?

私の中に悪い考えが浮かんだけれど、モノクマが話を続けるので思考を追求できなかった。

「ついでに、ヒントをもう一つやるクマ。確か、前にも言ったと思うクマ。この“コロシアイ学園生活”の参加者は全部で十七人の高校生だけだって……。ちなみに、コロシアイ学園生活が始まった後、希望ヶ峰学園に生きたまま足を踏み入れた人間も、その十七人だけだったクマ」

「え……?」

「それって……本当なの?」

険しい顔で尋ねた霧切さん。今までのおしゃべりが嘘のように、モノクマは黙り込んだ。

「なんだよ……急に黙り込んで」

苗木くんが心配するのも無視をして、しばらく沈黙してから、今度は突然笑い出す。かと思うと顔を真っ赤に染めて、「話はもう終わりだよ!」と叫んだ。怯んでのけぞった私とは対称的に、霧切さんは冷静で「情緒不安定なのかしら」と呟いていた。

そこからは何も情報を与えてもらえず、私たちはドアの方へ追いやられた。

本当に出てもいいのかな、と不安げに振り返った苗木くん。モノクマの言葉を信じて立ち去ったら、背後から殺されるのではないかと警戒しているみたいだった。そんな苗木くんをあざ笑うように、モノクマは「別にいいもんね。どうせ後でみんなまとめておしおきなんだし」つぶやいた。

「オマエラのために用意しておくよ。とってもスペシャルで絶望的なおしおきをさ」

うぷ……うぷぷぷぷ……という不安定で不気味な笑い声を聞きながら、私たちは体育館を後にした。

背後でピシャリと扉を閉めてから、私は自分の鼓動がいつもより早いことに気づいた。それと同時に汗も吹き出てくる。苗木くんがモノクマに処刑されずに済んだことに安堵して、涙までにじみそうになった。

「霧切さん、ありがとう。何から何まで霧切さんのお陰だよ……」

苗木くんが胸をなでおろしながら言った。霧切さんは視線を落とし、「喜ぶのはまだ早いわ。本当の勝負はこれからなんだから……」とこぼす。

「そっか、そうだよね……」

油断しきっていた私は自分の頬をパチンと叩いた。しかし霧切さんは、ふっと息を吐いて「……とは言え、ほっとしたのは私も一緒よ。良かったわ。向こうが誘いに乗ってくれて……」と笑った。

「で、でもさ、黒幕はどうして、霧切さんの誘いに乗ったのかな……?あんな勝負を受けたところで、黒幕には得なんてないはずなのに」

苗木くんの疑問に、霧切さんは「歩きながら話すわ」と言った。私たちは学校エリアの廊下に出て、寄宿舎を目指しながら霧切さんの話を聞く。

彼女は、モノクマが受けざるを得なかったことこそが、黒幕のつけ入る隙だと説明した。

「黒幕のつけ入る隙ってなに?」

「私は直接聞いたわけじゃないけど、黒幕が言ってたんでしょ?」

霧切さんは、学園生活の様子が電波ジャックにより全国に生中継されていることを指摘した。苗木くんが肯定すると、確信めいた表情で続ける。

電波ジャックは簡単にできることではない。それだけ困難なことをやってのけたといことは、黒幕にはどうしても電波ジャックをしなければならない理由があったということだ。

さらに、黒幕は私たちを一方的に殺すことではなく、殺し合いをさせることにこだわっていた。霧切さんはそこから、黒幕の目的が、私たちの殺し合いを世間に見せつけることだと推理した。

「“希望”と称される私たちが、“絶望”に沈み殺し合いをする……。その姿を世間に見せつけることで『絶望は希望より優れている』と証明したかったのよ……」

「そんな、……バカみたいな理由で、私たちはこんな目にあってるってこと……?」

震える声で呟くと、前を歩く霧切さんは肯定した。

「確かにバカバカしくて理不尽ね……。でも、超高校級の絶望と呼ばれる連中なら、いかにも考えそうなこと……」

そんなことのために、みんなは――。

虚しさにうなだれたら、隣で苗木くんも怒りをあらわにした。

霧切さんは、苗木くんをなだめるために、黒幕にそういう考えがあったからこそ、校則を守っていた私たちは理不尽に殺されずにすんだのだと説明していたけれど、その内容はあまり頭に入ってこなかった。

「……思ったようにことが運んでよかったけど、喜んでばかりもいられないわね。私たちはまだ、戦うチャンスを得ただけ。ここで勝たなければ、すべてが無意味になってしまう」

顔を上げて、霧切さんの背中を見た。忘れかけていた恐怖が、また足元から這い上がってくる

急いでみんなに会って、事情を説明しようという苗木くんに、霧切さんが、寄宿舎にいるはずだと返していた。みんなで協力すればきっとうまくいくよね、と苗木くんが言うのを聞いて、この人はどれだけ優しいんだろうと、やりきれない気持ちになった。一度裏切られて殺されかけたのに、まだみんなとの協力を願っているのだ。私は、みんなと顔を合わせることが、恐ろしかった。そして、そんな自分が嫌だった。信じるとか仲間とか軽々しく口にしてきた自分が、バカみたいだった。私にはやっぱり、苗木くんしかいないみたいだ。そう思ったら無意識に伸びた手が、彼のパーカーの裾を掴んでいた。驚いたように振り返った苗木くんが、妙な表情をした。しかしすぐに笑顔になって、私の手を握る。

「大丈夫だよ」

小声でつぶやいた彼。それだけで私の中にあった毒気は、幸せな気持ちに隠れてしまう。苗木くんがいれば、私はきっと大丈夫だ。




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151031