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「もう犯人は分かっているじゃない」

犯人が処分したスポーツバッグやジャージに注目すれば、不二咲さんが誰に出会ったかは明白になると、霧切さんは言った。みんなが困惑し、うろたえても、勝利を確信したような微笑を携え、意見を曲げない。

「みんなでよく話し合ってみれば分かるわ……」

「は、話し合ってみろって言われても……。じゃあ、セレスちゃんに聞くけど……そのバッグやジャージには、何か特徴とかなかった?」

「バッグは倉庫にある普通のバッグでしたわ。倉庫にあるバッグは、その一種類だけですし、特徴と言われましても……」

朝日奈さんの質問に、セレスさんが困り果てた様子で仰いだ。今にも物憂げなため息を吐き出しそうな彼女に、今度は私が問いかける。

「ねえ、ジャージは?ジャージには種類があったよね。いろんなブランドのジャージがあったの、水着探してた時に見かけたんだ」

「……だったら、彼が持っていたジャージについて、話し合ってみましょうか?」霧切さんは考えこむように俯く。「そもそも、不二咲千尋は……トレーニングに行こうとしていたはずよ。そこで、彼はどうして……あんなジャージを選んだのかしらね?」

「あんなジャージとはどういう意味だ?」

すぐさま反応した十神くんに、霧切さんは答えなかった。

「わかったぞ。彼が選んだジャージは……犯人が持っている物とお揃いだったのだな!」

石丸くんが叫ぶ。私は深くうなずいて、それに同意した。

「そっか……不二咲さんはその人のこと信頼してたんだもんね。その可能性は十分にあるよ!」

「つまり、犯人はアイツと同じ青いジャージを持ってんだな?俺は黒だから違うな」

「俺は白いジャージを持ってんべ」

「ぼ、僕はジャージすら持ってないですぞ……」

「……ちょっと待って!」

議論がいい感じに盛り上がってきた時、苗木くんが遮った。彼は自分の胸に右手を置いて、額にうっすらと汗をにじませた。

「今の言葉はおかしいよね……大和田くん」

「……あぁ?おかしいって何がだ?」

「だって……さっきセレスさんが証言したときは……ジャージの色については何も言ってなかったんだ。それなのに、どうして大和田くんは、不二咲さんの着ていたジャージが、青だって知ってるの?」

体が一気に冷えた気がした。勢いよく大和田くんを振り返ると、彼は愕然とした表情で、苗木くんを凝視していた。十神くんがすぐさまセレスさんに、目撃したジャージの色を確認する。彼女は確かに青色だったと答えた。

「その話……学級裁判前に、誰かにした?」

「わたくしが、この話をしたのは、苗木くんだけですわ」

いつ不二咲さんのジャージの色を知ったのか?そう問われた大和田くんは返答に詰まった。代わりに発言したのは石丸くんで、きっと捜査の時に見つけたのだと庇ったが、霧切さんがあっさりと否定した。

大和田くんは、たまたまジャージを持って歩いているところを見かけたと主張した。しかし、これも苗木くんが反論する。不二咲さんはセレスさんに見つかった時、その場でジャージをバッグにしまいこんだのだから、たまたま見かけただけじゃジャージの色は分からないからだ。

今度こそ言葉を失ったらしく、大和田くんは黙り込んでしまった。霧切さんは得意気な表情で、「墓穴を掘ったわね?」と言った。私はそれで、先ほどの彼女の言葉がはったりだったことを知る。全ては犯人をあぶりだすための、罠だったのだ。

案の定、セレスさんや十神くんに指摘されると彼女は肯定した。しかし、最初から大和田くんが怪しいと思っていたのも事実だと、霧切さんは主張する。

「呼称が変わったから……?」

苗木くんの言葉に、霧切さんは一瞬驚きの表情を見せた。けれどすぐに口で緩やかな弧を描く。彼女は笑っていた。

大和田くんは女性のことを“あの女”と呼び、男性のことは“アイツ”と呼ぶらしい。それなのに殺人が起きた後、大和田くんは不二咲さんを、“アイツ”と呼ぶようになっていた。こうした変化に気づいた霧切さんは、大和田くんが不二咲千尋の本当の性別を知っているのではないかと、予測していたのだそうだ。

「大和田くん……本当にキミなの?本当にキミが……不二咲さんを……殺したの……?」

まだどこか信じられない気持ちがあるのか、苗木くんが慎重に問いかけた。途端に青ざめていた大和田くんの顔が赤くなる。彼は手すりを叩き付けるように握ると、「こ、こ、こ、こ、こ……殺してねぇぇぇぇぇぇッ!!」と叫んだ。

「大体なんなんだよッ!さっきから聞いてりゃ、揚げ足とったり、言葉尻とらえた程度で……オレを犯人扱いするってのかぁ!?」

「そ、そうだッ!兄弟がそんなことするはずがないッ!言いがかりに決まってる!!」

同調するように石丸くんも続く。それを聞いた霧切さんは、自分の推理が根拠としては弱いことを認めてしまった。

新しい手掛かりもなく、勢いに気圧され、誰も大和田くんに反論できずにいた。そんな中、苗木くんが思い出したように山田くんを呼ぶ。

「そういえば、山田くんは言ってたよね?犯人の証拠を見つけたとか……!」

言われた山田くんが取り出したのは、落ちているのを見つけたという電子生徒手帳だった。しかしそれは壊れていて起動せず、誰の者かもわからないらしい。

「確か、不二咲さんの電子生徒手帳って、現場からなくなってたんだよね?」

「えぇ、そうだったわね……」

苗木くんの問いに、霧切さんが肯定する。電子生徒手帳は、犯人が証拠隠滅をかねて壊したのだろうとセレスさんが推測した。

「……だが妙だな。その電子生徒手帳は、そう簡単には壊れないはずだぞ」

「えぇ、そのとーりです。完全防水でショック体制も強いから、滅多な事では壊れないはず……なんですが……」

十神くんの疑問に答えたモノクマの言葉は尻すぼみになった。セレスさんが狙ったように、強い言葉で口を挟む。

「ですが、この電子生徒手帳は壊れていますわよ。玄関ホールにあった桑田くんの電子生徒手帳もです。自信満々の割には……壊れすぎじゃありません?」

「うぷぷ……実はそこに謎があったりして……。さて、どうして電子生徒手帳は壊れたんでしょうかね?」

「モノクマは、前に言ってたよな?この電子生徒手帳には弱点があるって……」

苗木くんがつぶやくと、モノクマはわざとらしいぐらいに慌てた。そして、確かにそう口を滑らせたけど、誰にも弱点の詳細は話していないと主張した。

滅多に壊れないはずの電子生徒手帳が立て続けに二体も壊れているということは、誰かがその弱点に気づいたはずだと議論は発展する。霧切さんや朝日奈さんが、渋るモノクマから電子生徒手帳の唯一の弱点を聞きだそうと試みた。絶対に真似しないことを約束させたモノクマは、長時間、電子生徒手帳を高温状態にさらすと、熱暴走の末に壊れてしまうことを白状した。

それを聞いた途端に山田くんが納得し、壊れた電子生徒手帳がサウナに落ちていたと発言した。

次に問題点としてあがったのは、もしも犯人が意図的に不二咲くんの電子生徒手帳を壊したのなら、どうやって弱点を知ったのかということだった。

「犯人は何かの折に、偶然、サウナで電子生徒手帳を壊してしまった。そこで、電子生徒手帳の弱点を知ったお陰で……二度目の……不二咲千尋の時は、狙って壊すことが可能になったんじゃないかしら」

霧切さんの推測に、私は思わず口を挟む。

「でも……偶然サウナに電子生徒手帳を持ち込むことなんて、ある?ポケットに入れたまま忘れてた……とかでも、お風呂に入るなら服は当然ぬぐし……。やっぱり考えられないよ」

「……心当たりがあるかもしれない」

苗木くんが、言った。その視線は、苦しげに落とされた後、静かに大和田くんへと向けられた。

「大和田くん……サウナで電子生徒手帳を壊したのって、キミなんじゃないかな?」

大和田くんだけでなく、石丸くんまでもが顔から血の気を消した。

「前に、大和田くんと石丸くんはサウナで我慢比べをしたよね?その時、大和田くんは制服を着たままサウナに入ったけどさ……あの時の制服には、電子生徒手帳が入ったままだったんじゃないの?そこで、大和田くんは知ったんじゃないのかな……電子生徒手帳がサウナで壊れてしまうってことを……」

「待て、待ちたまえ!!」

反論したのは大和田くんではなく、石丸くんだった。彼は青ざめているにもかかわらず、背筋をピンと伸ばし、苗木くんを力強く指差した。

「そんな……兄弟が人を殺すなんて……僕は認めんぞぉぉぉ!!明確な根拠を言いたまえぇぇぇッ!!」

「根拠なら、あるよ。苗木くんが言うとおりなら、大和田くんは電子生徒手帳を壊しちゃったはずだから……」

石丸くんの瞳が苦痛の色に染まるから、私は発言を早々に後悔した。

「オレの電子生徒手帳はちゃんと動くぞ……」

震える声で反論する大和田くん。黙り込んだ私に気づいた苗木くんが、後を継ぐように身を乗り出した。

「そもそも、大和田くんが持ってる電子生徒手帳って、本当に大和田くんの物なの……?玄関ホールにあった壊れた電子生徒手帳……あの手帳が大和田くんの物なんじゃないの……?」

「き、君は……さっきから何を言ってるんだ……!」

「つまり、大和田くんは交換したんじゃないのかな?壊れた自分の電子生徒手帳と、桑田くんの電子生徒手帳を……」

石丸くんの問いかけに答えた苗木くんは、モノクマが桑田くんの電子生徒手帳は壊れていないと発言したことを、裏付けるように補足した。

交換は校則に引っかかるのではないかという朝日奈さんの疑問には、モノクマが答えた。場違いすぎる明るい声で、死人は他人とみなさなかった、何より面白かったから見過ごしたと説明する。

大和田くんは顔を真っ青にして震え、その全身に汗を浮かべていた。退路を断たれたことを自覚したのか、何も言わない。

「どうなの、大和田くん……今の推理が間違ってるなら言ってくれないか?間違ってるなら……ボクはそれでいいんだけど……」

「証拠はどうなんだ!?証拠はあるのかッ!?」

吠えるように反論するのは、やはり石丸くんだった。彼は今にも席を離れてしまいそうな勢いで、苗木くんに食ってかかる。

「証拠がないなら兄弟の犯行とは決めつけられないぞ!!」

「今までのボクの考えが当たってるなら……大和田くんは壊れた自分の電子生徒手帳を、桑田くんの物と交換してるはずなんだ。だから、ここでみんなの手帳を確認し合わない……?そうすれば――」

「その必要はねーよ」

あくまで冷静に諭そうとする苗木くんを遮って、大和田くんがつぶやいた。ずっと項垂れていた彼が、ようやく面をあげる。

「あぁ、そうだ……オレが……殺したんだよ……」

普段の彼からは想像できないぐらい、弱々しい、小さな声だった。とうとう石丸くんが自分の席を飛び出し、すがるように大和田くんの肩を揺らす。しかし、それでも大和田くんは、誰とも視線を合わせようとせず、モノクマに投票タイムを要求した。

「ま、待て……待ってくれ……!」

石丸くんの悲痛な叫びが私に思い出させたのは、ここに来てまだ日も浅い頃のことだった。まだみんなと打ち解けられず、一人でモノクマメダルを探していた私に手伝うと申し出てくれた大和田くん。遠慮して断ったら、厚意を受け取らないのは失礼だと本気で叱ってくれた。お礼で渡した新品のサラシを、本当に嬉しそうに受け取ってくれた。

それだけじゃない。十神くんに反論できずにいた私と不二咲さんを庇ってくれたのも、大和田くんだった。その時に口にした「弱い者いじめ」という単語が不二咲さんを傷つけたと知った時も、誠意をもって謝って、“男の約束”までしていた。そんな彼がどうして。どうして不二咲さんを――。

投票ボタンを押す指が震える。「桑田くんはみんなで殺したのと一緒だ」と主張した不二咲さんが、今この場にいたら、なんて言うだろうか。想像したって意味がないのに、考えてしまう。うずまく思考を遮るように叫んだのは、モノクマだった。

「投票の結果、大和田くんがクロとなりましたーッ!!今回も大正解でしたっ!!そうなのです……不二咲千尋くんを殺したクロは……大和田紋土くんなのでしたー!!」

モノクマが自分の座席で大げさな身振り手振りをする。立ち上がったかと思うと首を傾げ、石丸くんに視線を向けた。

「ちなみに、投票は満場一致ではありませんでした。石丸くんだけが不正解でした!石丸くん、危ないところでしたね!気をつけてくださいよッ!!」

そんなモノクマの声など聞こえていないかのように、石丸くんは大和田くんにすがり続けた。うわ言のように「なぜだ、どうしてだ」を繰り返す。大和田くんが黙り込んでいるのを見かねたのか、嫌がらせのつもりなのか、モノクマが勝手に事件の発端を語りだす。

殺人のきっかけとなったのは、またしてもモノクマが提示した動機だった。大和田くんには、絶対に知られてはいけない“過去”が存在したのだ。それは、かつては暴走族チームのトップだったお兄さんが、大和田くんのせいで死んでしまったという秘密だった。このことを世間に――チームメンバーに知られたら、お兄さんと最期にかわした“男の約束”が果たせなくなってしまう。彼は、二人で作ったチームを守るように頼まれていて、そのためにお兄さんの死の原因を偽っていたのだ。

大和田くんが不安に押しつぶされそうになっていたところに、同じく秘密を抱えた不二咲さんが訪れた。彼がモノクマに握られている秘密は、男なのに女の格好をしていることだった。

しかし不二咲さんは大和田くんとは違い、秘密をみんなに打ち明ける覚悟を決めていた。そのためにまず、トレーニングを始め、心身ともに鍛えあげたいから、強さの象徴であり憧れの対象である大和田くんに協力を求めたのだ。

『変わりたいんだ。いつまでも“ウソに逃げている弱い自分”を壊してさ……』

その一言は、張りつめていた大和田くんの心を壊すには十分すぎた。今までの生き方を否定され、自分にはない強さを見せつけられた彼は、嫉妬による衝動で――。

「もうやめてよ……!」

話を聞いているうちに涙が止まらなくなっていた。マスクを外し、風邪で喉が痛むのも忘れて叫ぶ。

「大和田くんも不二咲さんも、なんにも悪くないじゃん……全部、モノクマのせいじゃない……!!」

「あぁ、はいはい。また責任転嫁ですかッ!どうあってもボクを悪者にしたいんだね……。しょぼーん。……でもさ、どうでもいい思い出話をしちゃったせいで時間がおしてるんだよね。さっさとおしおきを始めちゃいますよッ」

「お、おしおきって……」

「処刑……ッ!?」

石丸くんが目を見開いた。桑田くんが硬球に滅多打ちにされる光景がフラッシュバックする。モノクマは立ちすくむ私たちにむかって、平然と言い放った。

「そういう約束でしょ?秩序を乱したクロは罰せられるって」

「ま、待て……!」

項垂れたまま何も言わない大和田くんを庇うように、石丸くんが立ちはだかった。

「今回は、超高校級の暴走族である大和田紋土くんのために、スペシャルなおしおきを用意させて頂きましたぞっ!!」

「ま、待つんだ……待ってくれ……」

「では張り切っていきましょう!おしおきターイム!」

「待てって言ってるじゃないか――――――ッ!!」

痛ましい石丸くんの叫びは無力だった。モノクマは宣言通り大和田くんの処刑を私たちに見せつけた。呆気なく人が死ぬ光景に、頭がどうにかなってしまいそうだった。

「うわぁぁぁぁああああ!!うわぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」

その場に崩れ落ちた石丸くんが泣き叫ぶ。彼の悲痛な叫びは裁判場にこだまして、私の脳を激しく揺さぶった。

「……あっけないものだな。ゲームの幕切れというものは……」

その呟きは、独り言というには大きく、あえて聞かせているようだった。手すりに突っ伏し泣きじゃくっていた私が素早く顔をあげると、こんな状況だというのに口元を歪ませ、笑いを堪える十神くんの姿があった。

「あんた……正気じゃない……何がゲームよ……仲間が死んだんだよ?」

「そりゃそうだ……これは命がけのゲームなんだからな……」

怒りに震える朝日奈さんの言葉さえ、平気でかわす。私はそれを聞いて、十神くんにも考えがあるのだからと、彼の担おうとしている役目を尊重しようとしていた自分が、いかに甘い考えを持っていたか悟った。

同時に抱いたのは深い絶望だった。ゲームだと割り切っていた十神くんが生き残って、コロシアイに抵抗した不二咲さんが死んでしまったこの結果に……。

仲間になることは、できないのだろうか。みんなと協力したいと願うことは、ただの現実逃避なのか。現状を受け入れ、十神くんのように明確な“ビジョン”を持つことが正しいのか。このままでは私も、不二咲さんのように、殺されてしまうのだろうか。

「私は、別にあなたの考えをどうこう言うつもりはない。そんなつもりはないけど……解せないの。どうして、あなたはわざわざ、大和田くんの犯行を偽装したの?」

いつもと変わらない冷静なトーンで声をかけたのは霧切さんだった。

「どうして、だと……?決まってるだろ。面白いからだ」

当然のように答えた十神くんは、最初から大和田くんを目撃していたことも明かした。けれどそれではつまらないと思い、盛り上げるため、勝手に手を貸したのだと言う。

「けどよ……あのまま犯人を当てられなかったら、オメーだって処刑されるところだったんだべ?」

「さすがに、そうなる前には答えを言ってたさ。ただ……」

十神くんは言葉を切って、私を一瞥した。しかしすぐに視線を逸らして苗木くんを睨む。

「優秀な誰かさんのお陰でそうならずにすんだがな。まったく、いいシミュレートができた。俺がクロになるとき……誰に一番気をつければいいか、これで分かった……」

苗木くんが驚きに目を見開く。彼の言葉に嫌な予感がしたようで、焦りと恐怖の入り混じった表情を見せた。私も、一瞬だけ交わった視線に何か意味があるような気がして、妙な胸騒ぎを覚える。しかし彼の目線の意味を追究する間もなく、霧切さんが話を中断させた。

「次は……モノクマに聞きたいことがあるの」

「おや、今度はボクですか?」

「あなたは毎回、ずいぶんと手の込んだ処刑をするのね?それは……何故かしら?」

バイクに縛りつけられた大和田くんの姿が瞼のうらに蘇り、マスクの上から口に手を当てた。こみあげる吐き気に堪えながら、モノクマと霧切さんのやりとりに集中する。

「これは、すべての希望を絶望に変えるおしおきなんだよねッ!」

モノクマはそう答えると、それに対する質問には一切取り合わなかった。モノクマの高笑いと、石丸くんの泣き声が混ざり合って、響き、飽和する。

今回の事件は、こうして幕を閉じた。

でも、この学園生活は、終わらない。私たちは逃げられない。

最悪の絶望は、どんどん加速していく――。




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