今日は初詣ではなく、正月
さすがに初詣は混むので地元民としては遠慮したい


毎年のように長い列に並び、やがて願掛けの順番がやってくる


「今年のお願いか…」



少し悩んだ末に

やっぱり神様に頼むんだ、少し無理なお願いがわりにいいかもしれない


そうして、私は無理なお願いを神様にした


「(私の大好きなツナくんが生き返りますように…!)」


ちょっと、新年早々重いかな





そんなお願いをして数日、近所の子がどうしても動物園に行きたいと言ってきたのだ

私にではなく、親だけれどもお母さんが言うには

「先に連れて行ってあげてくれる?この子の両親は後から行くって」


急な仕事が入ったらしく、後からすぐに追いかけるとのことだった


正直気は進まなかったけれども、行きたそうな子供の目を見ると

どことなく私が先に折れた


新年明けても、弱いよ自分…!



そんな子供を連れ動物園でキリン見たり、レッサーパンダ見たり
そして、この子の両親が指定したカフェで迎えを待っていた

「お姉ちゃん、キリンおっきかった!」

「そうだね、首長かったねー」

「うん!僕も将来あーんなに大きくなるんだ!」

「そっかぁ、じゃあたくさん食べないとね!」


そんな他愛もない話をしていると、この子の両親がやってきて
お礼とケーキセットを奢ってもらって、私は先に席を離れた




この動物園は隣接して遊園地があるのを思い出した

せっかくここまで来たし、遊園地で散歩してから帰ろうと思い歩いてると

ペンギンが自分を横切った


「……あ、そっか。冬だとペンギンのお散歩イベントとかやってたりするもんね」


確か、北海道の方だと毎年やっているとテレビが言ってた

不思議に思うことなく進んでると


ジャージ服を着た男の子が声かけてきた


「なぁ、おまえもしかして迷子なのか?」

「え、違いますよ…遊園地の方にって、こっちであってますよね?」

「ああ、でも今少しパニくってるかもな」

「パニック?」


なにがあったんだろうなんて考えてると彼はずばり当ててきた

「動物園から動物が逃げ出しちまってさ」

「えええ、それ大丈夫なんですか?」

「まぁ、大丈夫だろ!」


大丈夫じゃない気がする

でも、彼は一般人じゃないのかな

「あの、もしかしてボランティアの方ですか?」

「いや、俺も遊びにきたんだよ」

「それは残念でしたね」

「だな、でもこれもなかなか楽しいぜ!」


楽しいと言ってのける彼の瞳に迷いはなかった

そんな談笑を続けていると、現実に呼び戻すように

パォォォオンと大きな声が響いた

「うぉ、すげぇな!」

「象さん大きいね…やっぱり王様って言われるだけあるね」

「ん、王様?」

「うん、あ、でも王様ならみんないう事聞いて檻に戻っちゃうのかな」

「…」


彼は突然黙ってしまった、どうしたんだろう

もしかして、何か気に障ることを言ってしまったのだろうか

あたふたしていると、急にお礼を言われた

その声に反応していたら、彼の姿はもう隣にはなく象さんに乗ってた



「え、ええええ…えと、えっと」

「ん…?あ、俺山本武な!おまえはなんて言うんだ?」


名前を告げると、彼は「じゃ、またな!」と言って去ってしまった
彼は、山本君は象使いのお弟子さんだったのか

よくわからないけれど、このままこの場に残ってもどんくさい自分は足手まといになってしまいそうだったので、帰ることにした



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