大好きな人の命日を知って何日目がきたんだろうか

私はすっごく落ち込んでいる


身体がだるく感じて、学校を早退してしまった

なんだか、気分も沈んでしまい

学校にもいずらく感じた



「ツナ…くん、だったよね」



結局、あれっきりお話もできないまま

彼のお通夜は終わってしまったんだろうと参加もできなかった自分の臆病さに悔しさを覚える


家までの帰り道

彼の家の前を通るのは、どこか受け止められず

つい避けて


他の道から家まで帰ることにしている


お花くらい、持っていくべきだったよね…


「ねぇねぇ」


ちょんちょんとスカートの裾を引っ張られたように感じた

ふと下を向いてみると

小さな着ぐるみを着た子供がいた


「ランボさんねぇイーピンと喧嘩しちゃったの」

「え、喧嘩しちゃったの?」


もしかして、仲直りの方法かな。
でも、こんな見ず知らずの私よりもご家族に相談した方が…


「でも、ランボさん勝ったもんね!!!!」


えらそうだ!そして、喜んでる!!


「えっと、僕は仲直りしなくてもいいの?」

「僕じゃないよ、ランボさんだよ」

「え、うん…ランボさん」

「だって、イーピンが悪いもん」

「そうなの?」

「イーピンがいきなりぶつかってきたんだもんね!ランボさんは悪くない!」


ああ、ぶつかっちゃったんだね

「たんごぶ…はわかんないから、痛いところはない?」

「ランボさんは強いもんね!」

「そっかぁ、でも強いのと痛いのは別々だよ」

「そうなの?」

「強くても痛いって感じることは大事だよ」

「ふぅーん」


何言ってるんだろう自分は、こんな小さい子に…

しぶしぶ反省していると

ランボさんが喉乾いたと訴えられた

えっと、これは…公園に自動販売機あったよね、確か


「オレンジジュースのもっか」

「ランボさん、ぶどうがいい」

「…うん、あったら買うね」


なんか、美食家なのかな

ブドウが好きなのか、この子は

自動販売機にブドウ味のジュースなんておいてあったかな

なんて考えながら、ランボさんと手を繋いで公園までいく


「召使い!オレっちこれがいいんだもんね!」

さっそくつくとランボさんは自動販売機へ駆け寄り目当てのジュースに指さした

って、待って!召使って何!?

「ランボさん!私は召使いじゃないよ!」

「さっさと買えー!ランボさんに逆らったら…」

「え、わわわかった…買うよ、でも買わなかったら」

「ランボさん泣いちゃうもんねー!」


泣いちゃうの!?

って、これ傍から見たら…児童虐待…の構図


「買うね、これでいいんだよね?」

弱いよ!

自分でも、このチキンさには涙してる


それから、二人でベンチに座り

ランボさんはこのブドウ入り白ブドウジュースを堪能したのか

小さく呟いた


「イーピン…もうランボさんと遊んでくれないのかな」

「え、イーピン…くん?」

「イーピンは、女の子だもんね!」

「そ、そうだったんだ…イーピンちゃんか」


ランボくん、女の子と喧嘩しちゃったのか

「ランボくんは…仲直りしたいの?」

「…し、しなくていいもんね!」

「イーピンちゃんのこと嫌いなのかな?」

「違うもんね!ただ、オレっちは強いから一人でも大丈夫だもんね!」


そう言ってる、この小さな子は

どこか頑張ってるような気がした


背伸びして、誰かに追いつきたいような

決して転んでも泣かないような…我慢強い子なのかもと思えた


「イーピンちゃんはランボくんと遊びたいはずだよ」

「そうなの?」

「ランボくんはイーピンちゃんのこと嫌いじゃないんだよね」

「…うん」

「なら、今はごめんなさいしなくててもいいよ」

「いいの?ごめんなさいしなくても?」

「その代わり、イーピンちゃんのこと大事にしなきゃダメだよ?」

「だいじ?」


まだ、小さいもんね…うーん、なんていえばいいんだろ


「女の子が甘えてきたら、ちゃんと受け止めてあげてね」


ランボくんは、まだきょとんとしていて

よくわからないって顔をしてるけど


そうだよね、これ某雑誌の大物スターが言ってたことだし

あのスター…けっこうダンディだったし


「つまり、男は行動で示せってことだよ!…たぶん」

「ふぅーん…よくわかんないけど、ランボさんはできる男だもんね!」

「う、うん!ランボくんなら大丈夫だよ!」


自信はないけど、イーピンちゃんは良い子だとおもうなぁ

男の子だもんね、好きな子ほどいじめたくなっちゃうっていうアレかな


「オレっち帰る!」

「うん、お家の方向わかる?」

「オレっちはランボ様だもんね!」

「うん、ランボ様はお家の方向ちゃんと覚えてるのかな?」


そう尋ねると、家には帰らずに学校にいってお弁当を届けてくる、との事だった

学校…この近くにある学校って言ったら彼がかつて行ってた


並盛中学、しかないよね


「途中まで一緒にいこっか」

「ランボさん道わかるもんね!バカにすんな!」

「してないよ、行ってみたいなぁって思ったの」

「わかった、ランボさんが連れていってやるもんね!」


そういうと、私のスカートを引っ張って前進してるランボくん

たまにすれ違うおばさま方から「可愛らしいわねぇ」などと聞こえてくる

少し恥ずかしいな


でも、これを機に少しだけ


彼のいた場所に近づけたらいいな


少しだけでも一歩前に進めたらいいな


今度は、ランボくんに引っ張られずに


ちゃんと自分の足で



「着いたもんね!ランボさんえらいもんね!」

「すごいね、ランボくん」

「…おまえ、名前は?」

「え、猿子だよ、そういえば名前教えてなかっ」

「ガハハ、じゃあな!ランボさんのメイド1号!!」




…え、め、メイド1号って!?


「待って、ラ…ンボくん」


言い終わる頃には、ランボくんはすでに学校の中へ入っていった


…子供の考えることはよくわからないなぁと思いながら帰ったのと

やっぱり、最近の子は成長が早いなっと感じた


まだ小さいのに…メイドさんを知ってるだなんて

もしかして、お坊ちゃまなのかな


って、日本でそんな家庭あんまり見たことないし

テレビか漫画の影響を受けたんだろうな


ランボくん、イーピンちゃんと仲直りできたらいいなぁ


そんな気持ちを抱きながら、私は彼のいた学校に背を向け帰宅した


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