「へぇ、これ配ってる奴で可愛い子、俺初めて。どう?これから俺らと遊ぼーよ」

『あ、いや、ごめんなさいバイト中なんで…エンリョシトキマス』

「まあまあ、遠慮せずにさー?ね?んなことより楽しいこと…教えてやっからさぁ」

「そーそ、俺らと楽しもうよ」


いやいや、可愛い子なんかそこらへんに歩いてるだろ!!ほら!今の子なんか超可愛いよ!?肩を組まれ行こうよと急かす男達。通行人と目が合っても即座にそらされる。ですよねぇ!!分かるよ!!怖いもんね!!


『あの、すいません、本当にごめんなさい、ば、バイトの途中だし、可愛い子なら、ほら、いっぱい居ますよ』

「俺は君がいいかなー。…結構イイ身体してるしさぁ」

『ッ、!!!!』


ゾク、と一瞬で全身に嫌な鳥肌が立つ。別の男が腰に手を回し耳元で囁き、胸をおもむろに揉んできたから。感じたなどとは断じて、断じて!無い!気持ち悪い!!


「あらぁ?感じちゃった?」

『ざっ、け…な』

「え?なに?」


ふざけんなと、叫びそうになった、次の瞬間


「ぐぁッ……!!」


一人の男が後ろへと、飛んだ。そのまま良い感じに路地裏へ転がる。他の男達が驚いて飛んだ方とは反対側を凝視する。


『か、るま』


不機嫌な顔をしたカルマがそこには立っていた。男達を無視して私の腕を掴むと、何故か路地裏に入って行く。呆然と様子を見ていた男達は、我に返ったように暴言を吐きながら追いかけてくる。


「そこに居て」


いつもよりも、低い、カルマの声。私が頷いたのを確認すると後ろから殴りかかってきた男を一瞬で叩きのめした。多分、いや絶対5分と経っていない。なのにカルマの周りに立っている人は私を除いて誰も居ない。

まだ一人、意識のある男が呻き声を漏らし、クソッタレ…とカルマに向かって投げかけた。そいつは私の胸を揉んだ張本人。カルマは男の前に座り込むとニコリと笑った…が、目は全くこれっぽっちも笑っていない。


「ひィッ!!」

「相手が悪かったねー。俺の遊乃にあんなことしたんだから、どうなるかくらい馬鹿なあんたでも分かるよね?」

「あッ、あ…あ、」


物凄い殺気を込めてカルマは男を見つめる。ゆらりと、男に伸びる手が触れる瞬間…


「…勝手に落ちた」


気絶、したのだ。うん、怖かったもんね、分かるよ。同情はしない、むしろザマアミロだけど。ふん、命があっただけ有り難く思いな、ばーk「遊乃」『アッハイ…なんでございましょうカルマさん』

私を呼んだカルマの声はいまだに低いまま、ゆっくりと近付いてくる。あまりの怖さに、思わず後ろへと下がるが終わりは早い。

トン、と横にはカルマの腕。いわゆる壁ドン。ばくばくと脈打つ心臓は大人しくしてくれず、私よりも背の高い彼を見上げては逸らせない。


「何されちゃってるわけ」

『あ、いや、別に、なにも…』

「あ?」

『ゴメンナサイ、肩組まれて腰に手回されて胸揉まれて耳元で囁かれて心底気持ちが悪かったで、っぉわ!』


腰に手を回され、密着させられる。そのまま強く抱きしめられ耳元で聞こえた小さなリップ音。徐々に唇は下へと下がっていき胸元でまた、リップ音。


『っ、か、かる、ま』


何故、そんなに怒ってくれているんだ。何故そんなに、悔しそうなんだ、なんで、

再び強く抱きしめられ、次は耳元で囁かれる。先程の男の時とは違って心臓は煩く、顔も熱い。


「知ってた?…俺、遊乃のこと好きなんだよね」


その言葉により更に、ドキリと脈を打つ。カルマが、私を、好き?嘘…だって、私も、カルマのこと好き、だもの。


「遊乃ちゃん、好きだよ」

『〜〜っ、私も、すき』


あまりの恥ずかしさに、カルマの胸に顔を埋める。ふ、と笑って頭を撫でてくれる手は温かくて心地いい。


「ねぇ遊乃ちゃん。初デート、しよっか?」

『え、でも、』

「だいじょーぶ。ね?」


そう笑うやいなや、私から離れ散らばっていたティッシュを拾い集め、一人の男の頬をペチペチと叩く。目を覚ました男はカルマを見るなり情けない声をあげる。


「これ、俺達の代わりに配っててよ。ちゃんと、してくれるよね?」

「は、は、はいッ」

「んじゃ、よろしく。遊乃ちゃん行くよ」

『いや、それは流石に「遊乃」アッハイ』





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