MHA | ナノ

05


「名字先生って彼女いんの?」
「授業の質問じゃないんだね、上鳴くん」
「いーじゃん!名字先生のこと知りたいって子も多いんだぜ?」
「恋人はいるよ」

授業終了後、生徒からの授業の質問かと思えば全くそんなことはなかった。恋人、なんだから、俺は何も嘘を言ってないと思う。うん。

「え!マジで!?女子が悲しむな!いつから付き合ってんの?出会いは?」
「ぐいぐい来るな、君」
「知りてえもん」
「高校生の時に……イ"ッ」

突然の痛みに背後を振り返ると、このクラスの担任がじとりと俺のことを見ていた。ひえ。消太さんが掴んでいた尻尾を解放する。

「あ、相澤先生…」
「一緒にHRでもいかがかな?」
「あはは…遠慮しまぁす」
「まぁいいじゃねえか、見学してけよ」
「………はい」

俺と消太さんが話している隙に、A組の生徒達はそれぞれ席に着き、何食わぬ顔で静かにしていた。上手に生きてんのね…。俺はクラスを持っていないから、HRをやることがない。いつか機会があるかもしれないからと、提案(というか命令)に従い教卓に立つ消太さんの少し後ろで見学をすることにした。

「連絡は以上だ」

終始静かな状態で終わったHR。A組は消太さんに忠誠でも誓ってるの?絶対王政かなにか?ぞろぞろと生徒が教室から出ていく中、俺に向き直った消太さん。きた。

「俺が何を言いたいか分かるか」
「授業終わりに生徒と雑談してごめんなさい」
「そうじゃない」
「ごめんだにゃん」
「バカ猫が……話の内容だろ。お前は女性ファンが多いんだから、そういう話題には気を付けた方が良いんじゃないのか」
「へ?」

お説教タイムが始まると思った俺としては、心底意外だった。でもまぁ、そうか。そういう話題が広がるのは消太さん的に言えば非合理的なんだろう。

「別にいいんですよ」
「なにがだよ」
「俺は人気になるためにヒーローやってるんじゃないんです」
「合理的じゃないな」
「それでも、誠実さが取り柄なので」
「……はぁ」
「相澤先生も名字先生の彼女知ってんですか!?」
「…お前ら」

どこからともなく入ってきたのは、上鳴くんだった。緑谷くんも増えてる。彼は確か、ヒーローマニアというか、オタクなんだっけ。そんな話をしていたのを聞いたことがある。あ、消太さんが眉間にしわを寄せた。

「可愛い?」
「うん?ちょーかわいいよ」
「やっぱりヒーローなんですか!?」
「あぁ、そうだね」
「すき?」
「大好き」
「ひゅー!」
「……お前ら、馬鹿なこと言ってないで早く帰れ。時間は有限だぞ」

消太さんがそう言うと、2人は素直に帰って行った。「お前もだよ」ごもっともです。

「相澤先生は?恋人いますよね?」
「あ?」
「すきなのかなぁって」
「……お前ね、そう思ってないと一緒にいるわけないだろ」

俺ね、この人のこういうとこ本当に好き。


160511 教室の隅のフライデー
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