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01


「名前」

名前は猫だ。いや、正確には個性が猫だ。つやつやとした黒い毛並みの尻尾を揺らしながら、頭の上にある2つの耳をぴんと立たせている。名前を呼べば、透き通るような金色の瞳が俺を捉えた。

「なに、消太さん」

猫は気分屋で人ではなく家に懐くとよく言うが、名前に関してはそんなことはない。名前を呼べば返事をするし、懐いている人間に対しては従順だ。多少気分屋なところはあるが、これも彼の猫らしさのうちの1つだろう。

「お前、猫のくせに人に懐くよな」
「消太さんだけですよ」
「それもそうか」

同じく雄英高校の教師をしている名前とは、それぞれの授業以外ではだいたい同じ空間にいる。互いに準備をし、俺の車か、名前のバイクで学校へ向かう。合理的でいいだろう。

「消太さん、今年も個性把握テストからスタートですか?」
「ああ、そうだな」
「目に無理はしないように」
「分かってるよ」

たまに今日のように車以外の方法で通勤することもあるが、メディア露出をしない俺とは違い名前は顔が売れているし、この容姿からか特にファンも多く、街中で声を掛けられることがよくある。名前はそれが俺に迷惑なんじゃないかと言うが、俺はあまり気にしていない。さっきだって、女性ファンと一緒に写真を撮っていた。

「お前も朝から大変だな」
「消太さんに迷惑をかけて、」
「それはもういいっつったろ」
「だって」
「俺だって、名前のファンが増えるのは嬉しいよ」
「え、それって…!」
「どこの親も自分のうちの子が一番かわいいもんだ」

そう言うと唇を尖らせた名前の尻尾がだらりと下がった。あまりそういうのに興味のない俺でも分かる程度に、名前は端正な顔をしている。これはファンも多くなるだろう。

「…消太さんは、俺の恋人じゃないの」

うん、やっぱりうちの子が一番かわいいな。


20160505 うちの子が一番

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