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雄英を卒業してからの2年間、俺はヒーローの仕事、名前はインターンと学校の往復で互いに時間も合わず、顔を合わせた回数は片手で足りる程度だった。それでもこの日になると、名前は律儀に俺の事務所まで小包を送ってきていた。

「今年は私が来た!です」

どこぞのNo. 1ヒーローの真似をしながら俺の事務所を訪れた名前。そういやこいつもオールマイトが好きだったか。

「今事務所に居ますか?」と連絡が来たのが10分ほど前だった。名前の事務所も比較的近い位置にあるし、もしかしたら偶然任務で近くに来ているのかもしれないと思っていたが、訪れた名前がコスチュームではなく私服だったことに驚いた。今日は非番らしい。

「はい、どうぞ」
「……あぁ、ありがとう」
「ハッピーバレンタインです」

彼から受け取った小さめの深紅の紙袋。中には、紙袋と同じ深紅のリボンで装飾された黒い箱が入っている。恐らく今年もチョコレートだろう。学生最後のバレンタインに名前からチョコを貰えたら嬉しいと俺が言ったことを覚えているようで、こうして毎年わざわざ贈ってくれているらしい。

「コーヒーでも淹れようか?」
「いえ、もう出ますよ。先輩はお仕事中ですし」

本当に渡すだけ渡してすぐに帰るつもりのようだ。バレンタイン当日ということもあり、名前にも予定があるだろうから引き留めはしない。

「……名前」
「なんですか?」
「毎年嬉しいが、もうヒーロー活動も忙しい中で無理に用意しなくてもいいよ」
「先輩は、俺が先輩に言われたからこうやって毎年チョコを渡してると思ってますか?」
「…………あぁ」

俺なりに気を遣ったつもりの言葉だったが、名前はきょとんとした顔でこちらを見ており予想外の反応だった。

「先輩、それ本命ですからね」
「…………」
「お返し待ってます」

それじゃあ、と俺に手を振りながら事務所を出て行った名前。
取り残された俺は、手元の紙袋を覗く。元々先入観があったから気付かなかったが、確かにラッピングからしても義理やネタで渡すチョコレートではない。いかにも本命ですと言わんばかりの見た目をしている。

頻繁に会えてなくても、名前の気持ちは変わらず俺に向いているらしい。その事実が嬉しく、どこかむず痒かった。

素直に名前を帰すべきではなかっだろうか。


20220215
普通に間に合ってないし早くくっついて欲しい……。
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テーマ「人外ファンタジー」
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