MHA | ナノ

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〈プレゼント・マイクのぷちゃへんざレディオ! YEAHHHHHH!!!今夜のスペシャルゲストはシュレーディンガーだ!〉
〈こんばんは〉
〈長い付き合いだけど、このラジオのゲストは初めてだよなぁ!〉
〈確かにそうですね。呼んでもらえればいつでも来ますよ、俺〉

ラジオアプリから聴こえてくるのは、聴き慣れた2つの声だった。普段は夜な夜なアイツのラジオを聴いたりはしないが、今日のゲストは名前だ。話は変わる。

〈困らせ上手なアイツのコーナー!!今夜もビシバシとリスナーのお悩み解決していくぜェ!〉
〈イエーーーイ〉

良い空気でラジオが進行していく。いつだったかゲストに呼ばれたオールマイトさんは「全然噛み合わなかった…!」と落ち込んでいたが、マイクと名前の相性は昔から悪くないから問題なさそうに思える。

〈前々から告知してたからシュレーディンガーのフォロワーからのお便りが多いな!〉
〈それは嬉しいですね〉
〈じゃあ早速!ラジオネーム恋するネズミちゃん 私は好きな人がいます。2個上の先輩なのですが、告白しようか迷っています。先輩から見たら私は子供っぽく見えるんじゃないかと不安で踏み出せません。どうしたらいいでしょうか?だと〉
〈うわ、めちゃくちゃ可愛いお便りですね〉
〈HAHAHA!!ゲスト効果だな!ていうかよ、2個下ってそんなに子供っぽく見えるもんかァ?〉
〈マイク先輩と俺も2個違うけど〉
〈むしろシュレーディンガーは昔の方が落ち着いてたからな〉
〈じゃあ昔より落ち着きのない俺は、2歳差なんて誤差だと思います〉
〈気にせず振り向かせちまえばこっちのもんってことだな!〉
〈YES!〉

FOO!だの、GO!GO!だの、2人しかいないとは思えないほど賑やかなラジオは順調に進んでいく。改めて名前の順応性の高さと器用さに感心した。

〈あ、そういやシュレーディンガー宛てのお便りも募集してたんだよなァ〉
〈そうなんですか?来てます?〉
〈ラジオネーム三毛山さん。シュレーディンガー、いつも応援してます〉
〈ありがとうございます〉
〈突然ですが、シュレーディンガーの好みのタイプを教えてください!だとさ〉
〈黒髪セミロング、猫派、高身長、真面目で面倒見が良くて合理性を重んじるタイプの声が低めの人が好きです〉

「ごふっ」

何を言っているんだこいつは。危ねぇ、飲んでいたコーヒーを吹き出しかけた。

〈分からないリスナーのために言うが、これはシュレーディンガーが敬愛するとあるプロヒーローの特徴だ!お前さぁ、女の子の好みとかはないワケ?〉
〈あぁ、でも、他人に合わせず自分を貫いている方は魅力的だと思います〉
〈FOOO!!出たぜイケメン回答!〉
〈人に合わせなくて良いんですよ。そのままの貴方が良いんです〉

名前の恐ろしいところは、これを素で言っているところだ。決して仕事モードとかではない。根が素直で優しい男なのだ。まぁ、少し素直すぎるところがあるが。

それからラジオは無事に終わった。結局最後まで聴いてしまったな…。なんとなく気恥ずかしく、これから帰宅する名前にバレないようにベッドに潜り込んだ。



「あ、シュレーディンガーの……」
「ほんとだ…黒髪セミロング…」

職員室からA組までの道のりですれ違う他の科の生徒たちの囁き声が耳に届く。……クソ、あのラジオの視聴率どうなってんだよ。脳内で悪態をつきながら、聞こえないフリをて歩くスピードを速めた。
教室に入ると、席に着いた生徒たちが何か言いたげな生暖かい目で俺を見てくる。なんだその目は。こいつらもか。

「……はぁ、言いたいことがあるなら言え」

教室の空気が僅かに変わる。ラジオを聴いたか、人伝てに内容を聞いたであろう生徒たちが静かに目配せをした。

「先生って猫派だったんだね!」
「はい、先生は猫派です。朝礼を終わります」
「「「早ッ!?」」」

躊躇ない芦戸の一声に答え、教室を出た。職員室へ戻ったら、名前にデコピンをしよう。そのくらいなら許されるだろう。

「あ、消太さ……に"ゃ!」
「………ふう」
「なんかスッキリしてる……」


20211125
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