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買い逃さないように発売前にしっかりと予約していた雑誌を書店で受け取って来た。紙袋から取り出したそれの表紙をしばらく眺める。

本日発売のにゃんこのきもち特別号は、プロヒーローのシュレーディンガーの特集記事が20ページにも渡り掲載されている。表紙から本文までシュレーディンガーと猫の写真が多く使われていて、これだけでお値段以上の価値がある。2冊買って良かった。特に表紙の写真が良い。カジュアルめな白シャツと黒のベスト、黒の蝶ネクタイを付けたシュレーディンガーに数匹の猫が寄り添っているものだ。黒猫や白猫、ハチワレといったモノトーンの猫たちと、それな合わせたモノトーンの衣装とセットの中で、彼の透き通った宝石のような黄金の瞳が引き立ち、良い差し色になっている。

「ただいま消太さーん……って」
「おかえり、名前」
「それどうしたんですか」
「予約しておいた」
「2冊?」
「2冊」
「いやいや…せめて言ってくれたら貰ってくるのに」
「売り上げがよければまたこの雑誌の仕事が来るかもしれないだろ」
「それはそうですけど」

名前は雑誌を広げる俺の後ろから、覗き込むように俺の肩に顎を置いた。名前の特集記事は、沢山の写真とインタビューが掲載されており、読み応えもある。まぁインタビューといっても、本物はここに居るんだけどな。

「そんなに猫が好きなんですか」
「そりゃあね。ウチの子が断トツで一番可愛いと思うけど」
「んふふ、でしょ」

そのままペラペラと読み進めていくと、読者プレゼントのコーナーが目に留まる。抽選で2名にサイン入りチェキが当たるらしい。必要なのはハガキと雑誌に付いてる半券か。

「え、まさか応募するんですか?」
「そりゃあ権利はあるしな」
「本物が隣に居るのに!ちょっと、消太さん立って」
「はぁ?」
「いいから!」

リビングから出て行った名前が戻ってきた時、手にはチェキが握られていた。俺の隣に立った名前は、器用にレンズをこちら側へ向け構える。

「消太さん、カメラ見ててね……はいチーズ」

シャッター音とフラッシュの後に、カメラ前面の吐き出し口から写真が一枚出てくる。その写真を確認するより早く、名前は「もう一枚」と言ってシャッターを押した。慣れてるな、色々と。
数十秒経って現像された写真は、名前が俺にぴったりと寄り添ったものと、俺の頬にキスをしようとしている体勢のものだった。

「イレイザーヘッドと名前、どっちが良いですか?」
「……じゃあ、名前」
「はぁい」

名前はチェキと一緒に持ってきた銀色のペンでさらさらと文字を書き込んでいた。軽く振って乾かした二枚を「どうぞ」と渡される。チェキには"消太さんへ"の文字とシュレーディンガーのサインが書き込まれていた。

「ポーズが手慣れてるな」
「え?こんなこと消太さんにしかしませんよ」
「ありがとう、ヒーロー免許証を入れてるカードケースに挟むことにしよう」
「持ち歩いちゃうんだ」

とんでもなくレアなお宝を得た気分だ。大切にしよう。まぁ、雑誌の懸賞にも応募するけどな。


20211108 にゃんこのきもち
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