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13


「名前くん!良いところに!」
「………なんでしょうか」

事務室へ雄英のロゴ入りの封筒を貰いに行った帰り、1年A組の教室の前を通り過ぎると廊下まで教室内の歓声が聞こえてきた。横目で教壇に立つミッドナイトさんを見ながらそそくさと通り過ぎれば、そんな俺の様子に気付いたらしい彼女に引き止められてしまう。ミスった。絶対面倒なやつだ。

ミッドナイトさんに手招き(強制)され、教室内へ入る。隅っこで包帯がとれた消太さんが仮眠の体勢をとっていた。いよいよ何の授業…?

「野良猫ちゃんを捕まえたから、参考のために少しお話を聞きましょうか」
「えぇ……室内飼いですし…」
「言葉の綾じゃない。シュレーディンガーは学生の頃に決めたヒーロー名?」
「あぁ、ヒーロー名考える授業か……そうですね。その頃からずっと継続してます」

なるほど、それは盛り上がるのも分かる。芦戸さんが「ミステリアスな雰囲気が先生に似合ってるよね!」とリアクションをくれる。

「どういう意味を込めてシュレーディンガーにしたの?」
「え、なんでだろう………相澤先生」
「………チッ、特に深い意味はないよ」
「だそうです」
「……名前くんのヒーロー名付けたのイレイザーだったの?私を授業に呼んでおいて」
「得意じゃないのは本当です」

仮眠の体勢を決め込んでいた消太さんに声を掛けると、やっぱり起きてた。俺のヒーロー名の由来が初耳だったらしいミッドナイトさんも少し驚いている。

「他に候補とかあったの?」
「ありましたよ、即却下になったやつとか……」
「キャッツアイな」
「ブハッ!泥棒じゃん!!」
「後はシックスセンスってのも考えてた」
「猫の第六感!それは超アリ!」

このクラスは良いなぁ。リアクションというか、レスポンスがしっかりとあって。1人で授業をしている感がないから。

「……ていう感じで、ここで考えたヒーロー名が将来使い続けるものになるかもしれないので、しっかりと考えるようにね」

じゃあ俺は仕事があるので!と引き止められる前に素早く教室を出た。扉の外から「相澤先生、名字先生の学生時代って…」などと聞こえた気がしたが、一瞬で記憶から消して逃げるように職員室へ戻った。ごめん、消太さん。いや、俺は悪くないけど。



「……名前、よくあのタイミングで逃げたな」
「あ、消太さんお疲れさまです」

いつもより少しくたびれたように見える。消太さんは通りすがりに俺の頭をわしわしと撫でてから自分の席に着いた。そんな様子をミッドナイトさんがコーヒーを淹れながら笑っている。

「あれから2人の出会いについて質問攻めでねぇ」
「全然仮眠にならなかった」
「出会いもなにも、俺も雄英卒なの公表してますよ?」
「まさか学年が2個違うのにその頃から仲が良いなんて思いもしないわよ。第一、私も初めはびっくりしたしね」
「そういうものですか…」

まぁ、確かにそうかもしれない。俺自身、2個下の学年に仲が良い後輩がいるかと訊かれれば思い付く人物は1人もいない。というか1個下の学年にもいない。そりゃあ消太さんみたいに名前も知らない後輩に話し掛けに行ったりしないからな。

「で、説明してあげたんですか?俺達の出会いの話」
「……誰が教えるか、誰が」


20211108 名は体を表すらしい
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