MHA | ナノ

08


「消太さん」
「あぁ」
「消太さん」
「わかったっつうの」
「しょ、」
「……待て」

ぴしゃりと手のひらで遮られ、消太さんはHRがあると職員室を出て行ってしまった。尻尾と耳が弱々しく下がる。消太さんはプロ根性というか、合理性を突き詰めた結果なのか、驚きの1日で退院するという暴挙にでた。昨日は休校になったが、休むことなく今日からキッチリと出勤している。

「あいつも罪な男だなぁ、名前」
「マイク先輩」
「よーしよし」
「なんか違う…」
「辛辣!」

俺を撫でるマイク先輩の手が、なんとなく自分に馴染まなくて小首を傾げた。マイク先輩の手の動きは少しうるさい。すると横から甘い匂いがしたと思ったら、ミッドナイトさんが居てマイク先輩と同じように俺の頭に手を伸ばした。

「イレイザーがまだ包帯取れないんだから、少しの間これで我慢ね」
「ミッドナイトさんは丁寧に撫でてくれるので好きです」
「あらかわいい」
「ちぇー!」
「名前くんはイレイザーが弱点よね」

きっと突っ込まれると思ってた。まぁ、自分でも分かってたことだから。あれでも頑張って落ち着いていた方だ。だってあんな、あぁ、思い返したら目眩がしてきた。

「ヒーローは信じてあげることも大切よ」
「はい、それはそうなんですけど…」
「けど?」
「ヒーローの俺はイレイザーヘッドを信じてるんですけど、俺は、名字名前は、相澤消太のことが大切なんです」

2人は少し驚いたように、お互いに顔を見合わせている。それから、観念したように眉を下げて笑った。

「まぁ、飼い主みたいなモンだもんなぁ」
「名前くん、ウチの子になる?」
「なりませんよ」
「消太さん」

HRが終わったらしい消太さんが職員室に戻ってきた。包帯だらけで一瞬びっくりしたけど、そういえば退院したばかりだった。さっきまで俺の頭の中にいた消太さんは怪我をしてない消太さんだったから。「お前、授業あんだろ」あっ、そうだった。消太さんに安静にしててくださいね、と言ってから授業道具を持って職員室を出た。

「イレイザー、今の聞いてた?」
「えぇ」
「名前、昨日はどんな感じだったんだ?」
「あー…常にべったりだったな」
「飼い主大好きかよ」
「あんたホント幸せ者ね」
「それはもう」
「こいつ認めやがった!」
「あげませんよ、あいつはウチの子なんで」


20160517 ヒーローとして
20211107 修正
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -