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「お兄さん、高校生?」
「…え、俺っすか?そうですけど」
「へえ〜!かっこいいね!私たちとご飯でもどうかな?」
「は?えーと、いや、連れが…」
まぁ連れなんで一生来ないんですけどね。放課後、一人でゲームセンターで散財していたら、出口で年上であろう女の人2人組に声をかけられた。め、めんどくさい。「それならお連れさんが来るまでここで話そ?」じゃないよ。だから連れなんて存在しないんだってば。
「むしろ連れくんと一緒ならどう?」
「いやぁ…」
「ごめん、待った?」
「え?」
いきなり、俺とお姉さん方の間に入ってきた少年…つっても高校生だろうけど。誰か分からないけど、俺に話しかけて来たのは確かだ。
「君が待ち合わせ相手?よかったらこれから一緒に…」
「ごめんなさい、俺らこれから中学のクラス会なんで!」
「あはは、そうなんだ!なら仕方ないねぇ!」
きゃはは、またね、そう言って人混みの中に消えていく彼女たち。なにがあったんだろう。君たちはそれでいいの?まぁいいか。っていうかこの子は誰?茶髪の髪で、前髪を左右に分けてる白いジャージの男の子。身長は俺と同じくらいか。
「えっと、ありがとう…?」
「お兄さんさ、その顔なんだからナンパ慣れしてんじゃないんすか?」
「いや、ナンパとか経験ないんで」
「え、まじ?なんで?家でないの?まじ?引きこもり?」
なにこいつ。
「えーと…助けてくれてありがとう」
「気にしないで下さいよ、お兄さん困ってたし」
「……お礼とか」
「えー!いやいや、そんな!大したことしてないから一緒にプリクラ撮るくらいでいいっすよ!」
「君、ちゃっかりしてるね……名前はなんていうの」
伊達工二年の二口堅治です、とダブルピースで笑顔を見せる彼に言い知れぬ既視感を感じるが気のせいだろう。そう思いたい。
「やった、名前さんとプリクラ嬉しいっすわ!」
「初対面なのになんでプリクラ…普通に飯奢ってとかの方がいいんじゃないの」
「いや、名前さんの顔って俺の好みどストライクなんで形に残しておきたくて」
「………」
「あ、逃がしませんよ」
この子怖いな!さぁさぁとゲームセンターのプリクラコーナーに引っ張られ、箱の中に押し込まれる。お兄さん200円ちょうだい、と手を差し出されたから素直に財布から取り出して手渡す。二口くんは自身の財布からも同じだけ取り出して、コイン投入口に入れた。割り勘にしたらお礼にならないんじゃないのかな。それから手慣れた手つきで画面をタッチして操作し、適当に撮影も終わった。落書き?もなにを書けばいいのか分からなかったから取り敢えず今日の日付けを書いておいた。
「あ!この名前さんの顔超かっこいい」
「……そう」
「名前さん青城でしょ?もう1人いますよね、イケメン」
「あー、いるね」
「俺は名前さん方が好みっすよ」
「そ、そう?…ていうか、そんなにあいつ有名なの」
「俺がバレー部だからってのもあると思うんすけど、有名なんじゃないっすかね」
「ていうか二口くん、バレー部なんだ」
「そうっすよ…あ、俺そろそろ行きますね!プリクラあざーっした!」
待ち合わせをしていたらしく、俺に手を振りながら慌ただしく去って行った。ゲームセンターの入り口から見える広場に同じジャージを着た子がいるから、きっとあの子と待ち合わせをしていたんだな。うーん、この自動で切り分けられてたプリクラをどうしたらいいだろうか。
「……及川っぽかったな」
▽△▽△▽△
「及川、伊達工知ってる?」
「うん?そりゃあね、鉄壁でしょ?なに、知り合いでもいるの!?」
「いいや、知り合いってわけじゃないんだけど」
及川家のご飯をご馳走になり、及川の部屋で月バリをパラパラと捲っている時に放課後のプリクラを思い出した。及川にそのプリクラを渡すと、露骨に目を見開いてプリクラと俺の顔を見比べる。
「なにこれ!なんで!どうして!?」
「及川うるさい…ナンパ?されてるのを助けてくれたんだけど、そのお礼にプリクラ撮りたいって」
「そそ、それ逆ナンってやつだよ!名前ちゃん!」
「えー?」
「これ伊達工のWSじゃん!ムカつく!俺も名前ちゃんとプリクラ撮りたい!」
「そこなワケ」
「っていうか名前ちゃんさ、あんまりゲーセンとかナンパされやすそうな場所に1人で行くのやめよ?」
「だって」
「だってじゃありません!月曜日なら俺が着いて行くから、ついでにプリクラ撮ろ」
「まあ良いけど」
141001
ダブピ組大好きで、いつか絡ませたかったので満足です