sss | ナノ

(辻)

「あけましておめでとう辻!」
「ッ!!」
「俺もその反応はそろそろ悲しくなってきた」
「あー、まだ諦めてないの?」
「犬飼…諦める諦めないの話ではなく」
「女顔にも程があるって理由で嫌われてるのも可哀想だけどさ」
「嫌われてはいない!…と思う!」
「無理だと思うけどね、俺は」
「新年にそんな悲しいこと言うなよ…」
「現にさっきからずっと辻ちゃんは無言貫いてる訳だからね」
「……俺はどうしたら」
「整形したら?」
「できれば原型はとどめたい」
「じゃあ…体型?」
「分かった。じゃあ近いうちにゴリゴリになってくるから待っててくれ、辻」
「綺麗な顔してばかだなー」
「………っ、あの」
「え!辻!?しゃべ、な、なに!?」
「…分かってるんです、貴方が男の人だってことは」
「………うん」
「だから、…もう少しだけ待ってください、ちゃんと話が出来るように、なるまで」
「辻…!!分かった、いつまでも待つよ俺は!そうそう、辻にお年玉あげるね!恐竜ストラップ、可愛かったから買ってみたんだ」
「……ありがとうございます」
「うん、今年こそ辻と目を見て話せるように頑張るからね!」
「あれ、俺には?」
「なんで同い年の奴にやらなきゃいけないんだよ。じゃあ俺は自分の隊室に戻るな!」
「ちぇ」
「……………」
「しかしめげないなぁ」
「…恐竜、かわいい」


(荒船)

「すまん、遅れた」
「とんでもねえ、待ってたんだ」
「お、絶好調だな」
「まぁな、寒空の下で待たされりゃ調子も上がるわ」
「謝ってんだろ」
「別にいいけどさ、つまりはあいつらも外で待ってるってことだからな」
「あいつらは別にいい」
「当真が寒さに負けて帰ってないといいけど。ほら、猫はこたつでって言うだろ」
「猫扱いかよ」
「まぁそんな感じ…あ、お祭みたいに出店とか出てんのかな」
「出てんじゃねえか?」
「荒船、俺に綿あめ買ってくれよ」
「仕方ねえ、待たせたからな」
「まじ?やったぜ」
「ていうか綿あめって、女子か」
「お前、綿あめナメんなよ」
「別にナメてねえよ」
「これで俺と綿あめはあの夏以来の再会になるんだ…」
「あの夏ってなんだ」
「夏にいつものメンバーで祭行ったろ」
「その夏かよ!まぁ、確かに綿あめ食ってたなお前」
「だろ」
「どや顔すんな」
「ていうか寒いな、急ごうぜ」
「あいつら待たせるとうるさいしな」
「来年もみんなで初詣行けるといいな」
「まぁ…って、それはお賽銭入れてから願うことじゃねえのか」
「いや、それは別のお願いするし」
「なんて」
「荒船の犬嫌いが治りますように」
「無理」


(佐鳥)

[あけましておめでとうございます!]
「………佐鳥」
[来ちゃいましたね、2016年!]
「……そうだよ、来たよ」
[今年もよろしくお願いします、嵐山さん!]
「……うわああ!俺は!俺は!?」
[じゃあ一旦CMです!]
「くそー!俺はよろしくしないってのか!佐鳥のばか!生放送でも可愛いなちくしょう!」
ー♪
「…………」
ー♪
「……チッ、うるせえな誰だよこんな年明け直後に電話掛けてきやがって!」
《わっ、先輩!?なに、え、》
「佐鳥……?」
《佐鳥ですよー!いきなり怒られてびっくりしましたよ、もう!》
「…ごめん」
《佐鳥こそ、一緒に年越しできなくてごめんなさい》
「仕事だし仕方ないだろ」
《あはは、そう言って1人で生放送見ながらやけ酒してるの知ってるよ》
「なんで分かるんだよばか」
《佐鳥は先輩のことならお見通しですからね!》
「……もうすぐCM開けんじゃねえの」
《ねえ》
「…なんだよ」
《佐鳥の仕事はあと30分くらいで終わるからさ、おうちの鍵開けて待っててね》
「……仕方ねえな」
《今年もよろしくね、先輩》


(出水と禁煙)

「年越し蕎麦って、厄を断ち切るって意味があるんですって」
「へえ」
「………」
「お前、それおたくの隊長に教えてやった方がいいと思うんだけど」
「ですよね」
「みんなで忘年会をする、までは良かったんだけどさ」
「蕎麦が出てきたかと思ったら力うどんなんですもん、しかも全員分」
「相変わらず残念だな」
「あ」
「……ん?」
「気付いたらもう年明けてましたよ、3分前くらいに」
「まじか」
「カウントダウンしてる番組もあるのに、いつだかに録画したバラエティ番組を見てるからですよ」
「だって録画溜まってくじゃん」
「そうですけど!」
「そうだ出水、初詣とか行くか?」
「え、おれは別に毎年行くわけじゃないし…ていうか、そういうの嫌いでしょ?」
「俺?あー…まぁ、好きではないな」
「なら別にいいです」
「じゃあ、初日の出か」
「いや…特に…」
「エコかよ」
「良い恋人ですね!」
「俺的にはもっとわがまま言ってくれても良いんだけどな」
「おれ、2人で年越せただけで嬉しいもん」
「そんなこと言われたら何も言えなくなるじゃん」
「それでいいんすよ」
「……後でお年玉やる」
「ちゅーでもしてくれるんすか?」
「もうちゅーでもなんでもしてやるよ」
「いい年になりそう!」
「今年もよろしく、出水」
「はぁい」


(あの台詞は例の映画です)