sss | ナノ

(迅)

「迅!迅!」
「あー、やっぱり」
「やっぱりってなんだ!分かってたなら早く上着着ろ!」
「やだよ、寒いもん」
「冬なんだから、寒いのは当たり前だろうが!ほらほら、外行こう!真っ白だぞ!」
「強引な…うわ、寒!」
「雪を見るとやっと冬が来たなあって感じするよなぁ。ちょっと歩こうか」
「やだって言っても引っ張って行くんでしょ…ていうか寒くないの?」
「あ、筋肉量の差じゃない?」
「……………帰る」
「ごめんってば、冗談だよ」
「でもまぁ、嵐山は冬もいつも通り元気そうだよね」
「あいつはあの顔でパワー5だから」
「筋肉量ってのも、あながち…」
「まぁな」
「もうそれでいいから、寒いもんは寒いんだよ」
「あ、公園!」
「それは絶対やだ、帰ろう」
「公園はだめ?」
「だめ」
「ていうかさ、俺に連れ出される未来が視えてたんだろ?」
「悲しいけどね」
「なら俺が来る前に、逃げるなり隠れるなりすれば良かっただろ」
「それは、」
「俺は迅と見たかったんだよ、初雪」
「………」
「この言葉を聞きたいって思っちゃったんだろ、おまえ」
「……そうだよ、悪い?」
「いやぁ、寒い中外に出るのと俺の言葉を天秤にかけて、俺を選ぶなんて可愛いなぁと思って」
「…………むかつく、帰る!」
「あはは、ごめんって。でも、俺の言葉は嘘じゃないよ、悠一」


(太刀川)

「太刀川さん」
「ん」
「太刀川さーん」
「んー」
「んーじゃないっすよ!あんた俺をなんだと思ってんすか!」
「恋人だろ?あ、白いとこ取ってくれ」
「こっ、そ、そうですけど!って違う!なんでその恋人に淡々とみかんの皮を剥かせて口に運ばせてるんですか!」
「……レポートで手が離せないから?」
「それは自業自得です」
「そんな冷たいこと言うなよ」
「冷たいのは俺じゃなくて、大学での太刀川さんの評価でしょう?」
「ぐうの音も出ない」
「知ってます」
「みかんくれ」
「はい、剥いたみかんは置いておきますから自分で食べてくださいね。俺もみかん食べたかったんで」
「ちぇ」
「……って、うわ、すっぱ!」
「リアクション芸かよ」
「ハズレ引いた……」
「いや、このみかんどれも酸っぱいぞ」
「え、太刀川さん酸っぱいの好き?」
「みかんは甘い方がいいなぁ」
「じゃあなんで俺に口に運ばせるまでして食べるんですか…」
「お前の手から食べるとなんとなく美味しい気がするんだよなぁ」
「たっ、……!し、仕方ないですね!俺が残した分も食べてくださいね、口に運んであげるんで!」
「あー」


(風間)

「おい」
「ん、なに?蒼也くん」
「上着のボタンは閉めて、マフラーをしっかりと巻き直すんだ」
「ごめん、だらしなかったかな」
「そうじゃない」
「うん?」
「風邪を引くだろう」
「あぁ、そうだね。ありがとう」
「お前はただでさえ風邪を引きやすいんだから、少しは自分でも気を遣え」
「えー」
「えーじゃない」
「だって俺がしっかりしたら、蒼也くんが面倒見てくれなくなっちゃう」
「……子供か」
「あはは、確かにそうかもね」
「お前がしっかりしたら、心配以外の見方が出来るんだが」
「心配以外って?」
「なんだと思う」
「さぁ、なんだろうね」
「改善する気は無いのか」
「うーん…ないといえばないし、あるといえばあるかな」
「……面倒だな」
「今の俺にとって、蒼也くんが世話焼いてくれるのが一番の幸せだから。高望みはしたくないんだよ」
「はぁ…いつか自立と、その高望みとやらをしてもらうからな」
「うん、楽しみにしてる」


(出水と禁煙)

「出水ー」
「はぁーい」
「雪積もってるー」
「えっ!マジで!うわ、ほんとだ!」
「お前反応早いな」
「だって雪!積もってる!あ、真っ白ですね!そと!」
「そりゃあ雪だからなぁ。この階からだとあんまり見えなくないか?」
「ね、外、行きましょ」
「言うと思った。マフラー巻けよ」
「はい!」
「元気だな」
「……うわ、寒!冬ですね!」
「そうだな。ていうか、思ったより積もってないな」
「雪だるまは無理そうですね」
「作る気だったの?」
「……だって雪ですし」
「あはは、次積もったら一緒に作るか」
「約束ですからね」
「うん。あ、せっかく外出たからコンビニでも行く?」
「あ、肉まん食べたい」
「じゃあ俺はあんまんー」
「一口くださいね」
「交換な」
「やった。雪が降ると、なんだかやけに静かな感じしますよね」
「あぁ、なんでだろうな。まぁ、誰も外を歩いてないのもあるんだろうけどさ」
「それもそうっすね」
「ほら」
「はい?」
「手」
「………」
「歩いてる人いないし、コンビニまで」
「……コンビニから、出てからは?」
「出水はどうしたい?」
「つ、繋ぎたい!」
「うん、いいよ」
「冬っていいですね!」
「そうだなぁ」