sss | ナノ

「太刀川名前です、三門市に越してきたばかりで右も左も分かりませんが、仲良くしてくださると嬉しいです。よろしくお願いします」


朝のSHR。うとうとと船を漕いでいたが、聞きなれた名前に反応して、顔をガバリと上げる。教壇に立つ1人の女子生徒の姿に、そういえば転校生の紹介をしていたことを思い出した。彼女のふわりとした髪の毛と穏やかに笑った顔を見て、脳内を占拠するぐうたらな大学生の姿が霞んだ。


「じゃあ太刀川は、後ろの、あー…出水の隣の席に座ってくれ」
「はい、分かりました」


お、ラッキー。今までも着ていたかのように、着こなされた制服をはためかせ歩いてくる彼女は、少し離れたここから見ても絵になるのが分かった。右隣の空席、そこまで歩いてきた彼女は、俺の顔を見て目を細めた。


「よろしく、イズミクン」
「…………げっ」


彼女の目が、格子模様だったのだ。


(きっと続かない)