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「弾バカ、昼飯食おうぜ」
「おー」
「なにスマホいじってんの?ゲーム?」
「あ、おい!」


昼休みの教室。購買で買ったらしい惣菜パンとパック牛乳を手にした槍バカが、おれの背側からスマホの画面を覗いた。


「……見た?」
「あー、見た」


反射的に画面を伏せたが、遅かったらしい。槍バカは空いていた前の席のイスに座り、パックにストローを挿しながらおれを見る。どことなく楽しそうな表情をするな。頼むから。


「今の名前さん?」
「なんで掘り下げるんだよ……」
「もういいじゃん?見ちゃったし」
「……くそ」
「他にもあんの?」
「はぁ?見てえの?」
「見てえ」


名前さんって俺でもかっこいいと思うし、あとは好奇心で?と語尾を上げる槍バカ。まぁ、そこまで言うなら。名前さんを褒められて悪い気はしないし。ていうか、名前さんがかっこいいってのは常識だから。そろりと槍バカにスマホの画面を向ける。


「さらっとだぞ、さらっと」
「おー……これって隠し撮り?」
「………も、ある」
「自分の前ではそういう隙を見せるアピールやめてください」
「そう……そこまで言ってねえだろ!」
「やっぱり端正な顔してんなー」


画面をスワイプする槍バカを横目に、そうだろうそうだろうと内心ほくそ笑む。おれのスマホに名前さんフォルダがあるのも、隠し撮りがあるのも、名前さんがかっこいいせいだ。確かに、名前さんはおれの前だとそういう隙が多いのかもしれない。かわいい。あと、好きな人の写真が欲しいのは何も不自然なことではないと思うし。うん。そういうことだ。


「その辺でストップな」
「ちぇ、見せられないような写真でもあんの?」
「ちげーよ、ばか」


この人はおれのだから、その言葉は黙って飲み込んだ。


・・・


「出水、俺の隠し撮り持ってるんだって?」
「あのバカ!!!」
「あはは、そんなん撮る程か?」
「撮る程ですもん……逆に、名前さんはおれの隠し撮り持ってないの」
「持ってないと思うけど」


あいつは口が軽いのか面白がってるのか分からないが、名前さんに伝わるのに時間が掛からなかった。好きな人の写真が欲しいおれは、話の流れで質問をしたことを一瞬だけ後悔する。


「だって出水、いつも俺のこと見てるじゃん」


でも出水の写真はたくさんあるよ、と続ける名前さん。少しだけほっとした。そう言われてみれば、確かに。ある意味で、おれにはあえて隠し撮りをするような隙がないのかもしれない。


「そんな今生の別れでもあるまいし」
「でも、もったいない」
「減らねえだろ」
「見てないところで、名前さんがおれの知らない顔してたら嫌だし、全部知りたい」
「……お前ねえ」


じとりとおれを見る名前さんだけど、微かに頬が赤いような気がする。そこでやっと把握した。これ、もしかして、おれは凄く恥ずかしいことを言ったのでは、ないだろうか。じわじわと顔が熱くなるのを感じて、名前さんから顔を背けるように視線を外した。すると名前さんは、おれの顔を両手で包み、ぐいと自分の方に向けさせる。ほら、やっぱり名前さんの顔も赤い。


「名前さん、顔」
「……俺が、こんな顔になるのも、全部出水のせいだから」


顔を赤らめながらも、真剣な目でおれを見つめる名前さんの表情は確実にイケメンのそれだ。こういう日常の一場面で、この人のことが好きだと再認識する。名前さんもそうだといいなぁ。


「あ、寝顔の写真ならあるかも」
「は?いつの!?」
「太刀川隊の作戦室で」
「お、起こされた記憶ない」
「気持ち良さそうに寝てたから」
「……次からは絶対に起こしてください」


160725
落下の珀さんよりネタを拝借してしまいました…ありがとう神様…


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