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ふう、と白い煙を吐き出して短くなってしまった煙草を備え付けの灰皿に捨てる。空になったラークの赤い箱をゴミ箱へ入れ、喫煙所を出る。ボーダーには喫煙者が少ないようで(学生が多いからか)、本部の喫煙所で人に会うことは稀だ。その居心地の良さに、なかなか煙草をやめららない…というのは言い訳がましいか。


「名前さーん!」
「うお、出水」
「これからお時間ありますか!」
「模擬戦?」
「はい!良かったらお願いします!」
「別に用もないし、久しぶりにやるか」


飛びついて来た出水の頭をぽんぽんと撫でてやると嬉しそうに目を細める。出水公平は俺の弟子のようなもの(と言ったらようなものってなんすか!と怒られた)である。これでも一応S級というポジションにいるが、ノーマルトリガーを使って射手としても戦うことがある。資料として俺の映像でも見たのか、入隊したての出水が指導を仰いできたというわけだ。弟子を取る気は全く無かったが、こいつが一部で噂になったトリオン量がすごい奴であることと、熱心に足繁く俺の元にやってくる彼に興味を持ったことが始まりだった。


「今日こそ名前さんから1本取りますね!」
「おー、言っとけ」


そうして始まった10本勝負は俺の全勝で幕を閉じた。外に出ると、始めた時よりも数を増したギャラリーに苦笑しつつ出水に声をかけた。


「お疲れー」
「名前さん!少しは手加減!」
「そりゃあ俺だって弱い奴には手加減するよ。本気で相手してるんだから、喜ぶところだろ」
「な、なにそれ名前さんかっこいいずるい!もっと褒めて!好きです!」
「はいはい」


目を輝かせながら褒めてアピールをしてくる出水。ご機嫌に揺れる犬の耳と尻尾が見える気がする。


「名前さん、うちの出水はどう?」
「あ、太刀川さん」
「ハッ、誰の弟子だと思ってる」
「それもそうだな、名前さん俺とも戦ってよ」
「今度な」


ぶつくさ文句を言ってる太刀川に、急用でもあったのかと尋ねると臨時の防衛任務が入ったらしい。それを一番最初に言えよ。こんなんだから単位を落とすんだ…いや、理由は他にもあるだろうけど。


「じゃあ出水、気を付けろよ」
「はーい!いってきます、名前さん」
「ん、いってらっしゃい」


出水と太刀川を見送り、俺も本部から外に出る。さて、煙草買って帰るか。


150419
恋愛より禁煙に重きを置いたシリーズ


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