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「第二次大規模侵攻かぁ」
「もうすぐだよ、俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
「見分け方を聞いたところで、倒さなきゃいけないことには変わりないんだよな」
「会議終わりに言うセリフ?」
「あはは、そうだな」
「あ…名前さんって意外と図太いというか、マイペースというか…」
「なんか視えたんだな?」
「まぁ、悪い未来じゃないから」


そんな会話を悠一としたのが数日前。そして今、ベランダから見える空にいくつもの禍々しい門が開いているのが見えた。本当にすぐだった。とりあえず少量の洗濯物をベランダに干しながら、悠一の言葉を思い出す。俺がマイペースって、こういうことか。悪い未来ではないって言ってたし、致し方ない。


「トリガー起動」


全て干し終わり換装すると、タイミングを見計らったかのように通信が入ってきた。


《名前さん!?》
「出水?」
《怪我してない!?》
「え、なに、してないけど」
《…名前さんのトリオン体の反応がないって騒ぎになってたんすけど》
「あー、洗濯してた」
《洗濯!?》
「うん、洗濯」
《名前さんのばか!俺すげえ心配したんすよ!?》
「ごめんごめん」
《…ちゃんと本部に連絡するんですよ》
「うん。出水」
《はい?》
「気を付けろよ」
《名前さんも!》


出水との通信を切る。どうやら太刀川隊はそれぞれ別行動らしい。一緒に行動しているならば、確実にさっきの会話に太刀川が入ってきただろうし。すると間髪入れず、再び通信が入る。


《名前か?》
「うん、俺だよ。遅くなってごめんね」
《無事で何よりだが…城戸さんが》
「え?」
《なにをしていたか言え、と…》
「……………せんたく」
《……………………》
「うわ、なんか折れる音が聞こえた!」
《…城戸さんが鉛筆を折った音だ》


こわ…。先ほどの鈍い音が脳内で反響する中で、忍田さんに現状を教えてもらった。トリオン兵は西、北西、東、南、南西の5方向に分散しているらしい。そこで、各方向に部隊を出動させているとのことだ。あれ、俺やることないんじゃないだろうか。


《…名前》
「うわ、城戸さん」
《お前の仕事は新型の撃破、及び5方向以外に漏れたトリオン兵の殲滅だ》
「5方向以外って、あれ?もしかして俺、やけに広い範囲を任されてる?」
《命令だ》
「……はい」


怒ってる。まぁ、今は忘れよう。それよりも仕事だ。通信を切り、ベランダから飛び降りた。


・・・


トリオン兵にアステロイドを撃ち込みながら移動する。しらみ潰しだ。移動範囲はやたらと広いが、トリオン兵の数は少ない。


「まだいる?」
《もう他の区域に向かっても大丈夫よ》


指示に従って移動すると、見慣れないトリオン兵を視界に捉えた。ウサギのような耳がある。これが新型トリオン兵か。絶えず通信で入ってくる情報によれば、狙いはC級隊員らしい。C級隊員を逃しつつ黒トリガーを起動した。


「沢村さん、俺の新型撃破数の記録もよろしくね」
《はいはい》


・・・


新型を倒しながら東に移動していると、見覚えのある黒に白いラインが入った隊服を身に纏う男が、倒したであろう新型トリオン兵の上に腰を下ろしていた。


「名前さん」
「お、太刀川」
「黒トリガーに会った?」
「いや、全く」
「残念だな」
「なんか裏で上手いことやってんだろうな、あいつがさ」


“あいつ”というのは恐らく迅のことだろう。伸びをするように背筋を伸ばした名前さんに釣られて空を見上げると、あんなに曇っていた空に晴れ間がさしていた。ひと段落ついたか、そう思ったタイミングで本部から通信が入る。


《慶と名前だな?》
「忍田さん」
《人型は去った。今から残敵の掃討とC級隊員の人数確認を頼む》
「了解」
《…それと、鬼怒田さんから》
「鬼怒田さん?」
《新型が残っていたら粉々にせず倒してくれ、とのことだ》
「うわ、めんどくさ」
《苗字、聞こえてるぞ!》
「んげ!」
《解析すれば何かに役立つかもしれんからな、頼んだぞ》


そこで無情にも通信は切られた。タイミング良く新型の耳が建物の奥に見え、名前さんと顔を見合わせる。あれは「お前が行け」の顔だ。


「俺、粉々にしちゃうタイプだから」
「なんだそのタイプ」
「あれだっけ、捕まったらキューブになるんだっけ?」
「そうそう、諏訪さんがなった」
「まじかよ洸太郎」
「もう戻ってるけどな」
「ねえ太刀川」
「……待った待った名前さん、」
「俺も捕まってくるから回収よろしく」
「なんでそうなるんだよ!」
「だって気になるだろ!どんな感じか!」
「ま、まぁその気持ちは分かるけど」
「ほらな」


にたりと笑った名前さんは「キューブの解析は済んでるんだろ、後でどんな感じか教えてやるから」と言って、新型のいる方向に向かって行ってしまった。あの人のたまに出る変な好奇心はなんなんだ…後で出水に怒られるんだろうなぁと思いながら、名前さんの後を追った。



151128
原作に介入させすぎたくなくて、ある程度単独で成り立つS級っていうポジションにしました。その結果、第二次大規模侵攻編がスッと終った…へへ…なにもないのもなぁと思ってこういう…別名「お前が箱になるんだよ!」編です。(本日の言訳のコーナー)


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