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「あれ、苗字さんもしかして雨に降られたんすか」
「出水くん…ちょっと近くのコンビニに行っただけなんだけどね」
「不運ですね」
「それ禁句」
「あ、彼女に振られたんでしたっけ」


タイミング悪く(むしろ最高のタイミングで)降り出した豪雨のせいで濡れてしまったジャケットを脱ぎながら歩いていると、出水くんと出会った。彼は年上年下関係なく物怖じしないタイプというか、単に人見知りをしないタイプの人間だ。


「出水くんこそ健気で一途らしいね」
「は、っ!?」
「太刀川から聞いた」
「あの髭…!」
「深くは聞いてないから安心してよ」
「……はい」


俺の言葉に、若干飛び上がるようにして驚いてみせた出水くん。あの髭って、おたくの隊長でしょうに。「あー、びびった」と息を整える彼の顔は若干赤い。ていうか、あれ。なんで俺が振られたって知ってるんだろう。疑問をそのまま口にすれば、よく知った人物の名前が出てきた。


「槍バ……米屋っすよ」
「陽介?」
「はい」


陽介め、人の不幸を。あれ、そういえばここ数日、陽介の姿を見ていない。さっき三輪くんと奈良坂くんとはすれ違ったが、陽介は居なかった。どうしたんだろう。


「ていうか、トリガー起動したら濡れなかったんじゃないんすか?」
「私用で使うのは…」
「苗字さん真面目!本当にうちの隊長と同い年ですか?」


・・・


防衛任務も特に大きな問題が起きずに終了した。実にいいことだ。それから帰宅し、母の作った夕飯を食べる。揚げたての唐揚げを箸で取りながら、遅れて席に着いた妹を視界に入れた。そういえば、彼女も普通校の2年生だっけ。


「お兄ちゃんどうしたの?」
「あのさ、米屋陽介って分かる?」
「あぁ。クラスは違うけど、出水とよく一緒にいるのは見るよ」
「クラスは違うんだ」
「あ、同じ委員会だったよ」
「陽介、学校ではどんな感じなの?」
「うーん…体育会系って感じ?」
「……だよね」
「でも後輩に構ってたりしてすごく面倒見がいいと思う。私的には三輪と仲が良いってのが意外だったかなぁ」


それからは、今日も辞書を忘れて出水に借りに来てただの、昨日は英語の教科書だっただのと、陽介の忘れ物事情ばかりが耳に入ってくる。これは少し注意しないと。最近彼に会っていないが話によればちゃんと学校には来ているらしいから、たまたま任務のタイミングのせいで会えていないだけか、もしくは避けられているか。


「米屋がどうかしたの?」
「いや、最近見かけないから」
「お兄ちゃんが何かしたんじゃないの」
「……なにか、って」


なんだろう。と、考えるまでもなく答えは出た。そりゃあ、正しい表現ではない気がするけど、俺は陽介を振ったんだから。俺だって、その、前には同じようなことをしたっていうのに、なにを寂しいだなんて思ってるんだろうか。あれ、俺は寂しかったの?そりゃあ、まぁ、可愛い後輩に会えないのは寂しいよね、多分。


「それより、ボーダーに嵐山隊長以外のイケメンっている?」
「え、イケメン?」
「今日雨だったじゃん。出水を迎えに来てる年上のかっこいい人を見たから、ボーダーなのかなって」
「出水くん……あぁ、それなら多分ボーダーの人だよ」


151115
こ、これは絶対29日に間に合わない…


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