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「うげー、きもちわるい…」
「名前さん大人しく寝てろよ」
「ごめんね当真…お前こそが冬島隊の最後の砦だ…」
「うちの隊の三半規管どうなってんだ」


けらけらと笑う当真は同じ隊の後輩だ。遠征から帰還してすぐに新しい任務を命じてくる組織ってどうなんだろう。労基に連絡してやろうかなどと頭の隅で文句を言いながら、壁に手をついて仮眠室へ急ぐ。恐らく隊長は隊室だろう。3人の隊員がいて、2人が船酔いでダウンって…とは思うがこれまではどうしようもない。なんとかたどり着いた仮眠室の硬いベットに横になる。


「んー…」


久しぶりにスマホを開き数件のメッセージを確認すると、もうすぐ付き合って一年だという彼女からだ。やっぱり連絡がつかない期間があるのには耐えられない、ごめんね、別れよう。やっぱりってなんだろう。船酔いも相まって歪み出した視界の中で彼女のことを思うが、一瞬顔を思い出せなかったから、つまり、そういうことだろう。だとしても気持ちのいいものではなく、この中途半端な気分を消し去るように目を閉じた。


・・・


ぐるぐるとした浮遊感に意識が浮上した。眉間にしわを寄せ、目をぎゅうと閉じたところで何も変わらないのは分かっているんだけど。今回はいつもよりひどい気がする。まだ吐いたりするタイプじゃなくて良かった。すると、ガチャリと扉が開いて誰かが入ってくる気配がする。数秒考え、目も開けたくないし寝た振りをしようと決めた時、唇になにか柔らかいものが当たってすぐに離れていった。何が起こったのか理解できずにいると、その人物は足早に仮眠室から出て行ってしまった。


「……………は?」


ぱちくりと天井を見やる。一瞬で彼女(元カノになったけど)のことは脳内から消え、船酔い特有の不快感だけが残った。


151112
29日に向けてのシリーズ


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