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私と太刀川さんは先輩後輩であり、恋人同士である。そして、右手と左膝から下が無くなり、そこからさらさらとトリオンが流れ出る私を、弧月を手にしたまま見下ろしているこの男が、太刀川慶である。


「太刀川さん」
「………」
「ねえ、太刀川さんったら」
「…………あぁ」
「………」


この人は、まったく。太刀川さんが私と戦う時、必ずと言っていいほど毎回このような戦い方をするのだ。このようなとは、トリオン供給機関を一発で破壊する隙があってもそうせず、手足を奪ってトリオン漏出過多を待つ。その時(今のような)の太刀川さんの表情は、心底この状況、行為にゾクゾクして堪らないって顔だ。緊急脱出を知らせる通信を聞いた次の瞬間にはベットの上だ。


「太刀川さん!」
「おぉ、名前」
「おぉじゃないですよ、毎回毎回」
「だってよ」
「だってじゃないですよ」


特に表情を変えるわけでもなく、その格子状の瞳で私を見つめて来る。蛇に睨まれた蛙、とまでは行かないが、私はこの瞳に見つめられると何もできなくなってしまう。どうしようもなく、彼の目が好きなのだ。
太刀川さんはそれを分かってるのか、分かってないのか。きっと、分かってる。


「名前」
「なんですか」


硬いベッドがギシリと音を立てる。ベッドに膝を乗せた太刀川さんは、もう一度名前を呼びながら私をゆっくりと押し倒してくる。そういえば、さっきの模擬戦は資料用に録画されてたはずだ。私たちのやり取りや表情までは分からないだろうが、それを彼にも伝えると「大丈夫、大丈夫」とたいして気にしたふうでもない言葉が返ってくる。なにが大丈夫なんだよ。


「名前」
「太刀川さん、こんなとこで盛るのやめてください」
「仕方ないだろ」
「仕方なくないでしょう」
「あんなに戦闘で支配欲が掻き立てられるの、お前だけだよ。すげーそそる」
「さすがに近界民に対してああいう興奮のし方してたら引きますけどね」
「お前もだろ」


その全てを見透かしたような目。やっぱりバレてたか。私の瞼に唇を落とした太刀川さんの頬に触れ、その手を頬を撫でるようにして瞼に手を移動させる。


「私、太刀川さんの目が好きです」
「知ってる」
「そんなに顔に出てますか?」
「俺が見つめると、お前の目もギラつくんだもん。気付いてないだろ」
「うわぁ、本当ですか」


驚きと、少しだけ自分に引いた。別に隠す必要もないのかもしれないけど、バレてしまったなら正直に口に出せばいい。私よりも正直者な太刀川さんは、それを行動に移すからさっきの模擬戦みたいなことが続くのだ。静かなこの部屋の中で、私の声はやけに響いた。


「これ、欲しいです」
「目のこと言ってんのか」
「はい」
「どうせ“私以外を写さないで欲しいの”とかいう可愛らしい意味じゃないんだろ」
「まさか。だって太刀川さん、すでに私以外見てないでしょう」
「まあな」
「そうじゃなくて、この目が、欲しいの」
「いいよ」


太刀川さんは何の気なしに答える。頬を撫でる私の手に猫のように擦り寄りながら、少しだけ細められた目。


「俺がお前の手足を奪う前に、抉り取れたらな」
「え、いいの、抉って」
「だからいいっつってんだろ、トリオン体だしどうせ痛くない…って痛え!」


私の上から太刀川さんを除け(ベッドの下に落とした)立ち上がった。ムードがどうのとかぶつくさと文句を言う太刀川さんをよそに、扉を開けて小部屋から外に出る。訓練、訓練しましょう。早く太刀川さんの目を抉りたい。そう言うと、外にいたギャラリーがざわめいたのが分かったが気にしない。


「名前も大概だよな」
「そりゃあ、太刀川さんの彼女ですし」


150425
アニメのトリオンはキラキラしてて綺麗ですよね


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