愛猫/仗助*猫耳あり*


 少し膨らんだクリアファイルを片手に歩く放課後。
 今日は仗助が学校を休んだ。
 改造した制服にリーゼントの見た目でも学校には毎日ちゃんと来る。普段のその真面目さが今の心配を余計に駆り立てる。
「体調悪いのかな……出てくれるかな」
 鼓動が障る指をインターホンに伸ばした。
「鈴だけど、今日のプリント届けに来たよ」
「あー……玄関空いてっから渡しに来てくれない?」
 インターホン越しの声は元気そうで安心する。
「お邪魔しまーす。仗助ー?」
 階段を降りてきた仗助はいつもの制服リーゼント以外はいつも通り、とは言えなかった。
「……ありがと……鈴」
「え?!それどうしたの?!」
 セットしていない髪の間から猫耳が生えている。
「……朝起きたら生えてた」
「ええ……仗助は猫ってより犬なのに……」
「突っ込むとこそこか?」
 今だ。
 私は思い切り背伸びをして耳に触れる。
「ちょ、鈴ッくすぐってぇ」
「本物?!」
 実は仗助が私を驚かそうとして、耳を付けているのだと思っていた。しかし、明らかに偽物ではない温かさと仗助の反応で本当に生えていると確信する。
「ご、ごめん仗助」
「抱きしめてくれたら許す」
 小さい子が拗ねたような口振りの仗助の耳は外に沿っている。
「ふふっ……ごめんね」
「よし、許す」

 ぐるぐると鳴る喉の音を聞いたのは黙っておこう。

2020.04.29
2020.12.15改題

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