二方想い/イルとギア


 デジタル時計が午後2時を表示しているアジトには、珍しく暇そうにしているギャングが時間を持て余していた。
「おはようさん、鈴」
「おはようイルーゾォ。おはようって時間じゃないけどね〜」
 まだ日は低くない時間なのに薄暗い部屋には、イルーゾォが突っ立ってニヤニヤしている。
「あれ、ギアッチョも今日は仕事無いよね?」
「ギアッチョは裏にいるぜ」
「え?何で?」
「鈴が自分で見てきな」

 半分押し出されるようにしてアジトの外に出る。裏に回るとギアッチョがしゃがみ込んでいた。
「……ギアッチョ?」
 途端にギアッチョの影から何かが走り去って行く。
「今の、猫だよね?」
「野良猫可愛がって悪いかよ。逃げちまったじゃねーかッ」
 こちらに振り向いたギアッチョの両手には、猫がいかにも喜びそうなおもちゃやらおやつやらが握られている。
「ふふっごめんごめん。私も呼んでくれれば良かったのに」
「……今度な」

 アジトに戻ると、相変わらずイルーゾォはニヤついていた。
「会えたか?」
「会えたよ。猫ちゃんがいるなら呼んでくれてもいいのに……ギアッチョったら自分だけ猫と触れ合おうとしちゃって」
「ああ、そうかい」

 イルーゾォだけが知っているギアッチョの片想いを、イルーゾォはニヤつきの奥へ押し込めた。

2020.04.27

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