蕩けるような、射抜くような
部屋に干した洗濯物を畳みながら、ぼんやりとしてしまう。
大和さんの言葉の意味がわからなかった。
あんなに真っ直ぐわたしを見て、まるで確定事項のようにそれを伝えてくる人間なんて今までいなかった。そもそも、わたしたちはただの隣人でしかなくお互いについて何も知らない。最近話すようになっただけの関係である。
そしてなんだ、交際って、そんな言葉で許しがもらえるものなのだろうか。
「やになっちゃう」
思わずため息を漏らすも1人きりの部屋に溶けていく。
わたしはあの後意味もわからず逃げるようにタッパーを引ったくり自室に戻った。
ドアの隙間から見えた大和さんの表情が忘れられない。
あんな視線、知らない。
◇
春日晴さん。
晴さんは文具メーカーで働くOLだ。
いつもクセのない髪を靡かせて7時45分頃家を出て行く。
先日いただいたきんぴらはとてもおいしくて、気づけば全て平らげていた。大事に食べようと思っていたというのに。
母が料理の感想を伝えるととても喜んでいたのを思い出した。春日さんに伝えると、謙遜されたが嬉しそうであった。謙遜は彼女の美徳なのだろうが、もっと俺相手に自を出して欲しいと願ってしまう。
去年の年末彼女を見かけた際のあの表情が忘れられない。
あの時の彼女は隣人にやさしい春日さんではなかったのだろう。
はやく彼女との壁を取り去りたい。