「理由を聞いてもいいか」
 いいか。そう問うていても、彼は有無を言わせない、そういう雰囲気を纏っていた。
 「結婚をね、勧められたの」
 声が震える。
 「わたしも、もう20台後半でしょ。いつまでもふわふわしてられないの」
 品の良いレストランで、彼もまさかこんなをされるとは予想しなかっただろう。
 「わたしたち、褒められるような関係ではないじゃない。貴方にもちろん非はないわ。ガラルのみんなが貴方を望むもの。そんなひとに触れてもらえていた、それだけでわたしは十分よ」
 窓の外に見える光は一つ一つが営みである。その一つ一つが彼を求め、憧れ、愛しているのだ。そんな彼に幻想を与えられただけでわたしはしあわせではないか。
 「ダンデ、わたし貴方に抱かれるのはすきよ」
 彼はその黄金を細めた。
 わたしは手元のシャンパンに目を落とす。
 彼にじと見られると、どうも逃げ出したくなってしまうのだ。
 「一方的で申し訳ないのだけど、今日はわたしたち、最後の夜よ。わたし、貴方とのセックス、とてもすきなの」
 まるでダンデがわたしの事を愛してるかのよつな錯覚を得る。
 シャンパンによりも深く、底から輝くような彼の瞳は、シーツと闇の中ではぎらぎらとわたしを食い尽くさんと燃えるのだ。ぎらぎらとするくせに、どうしようもなく優しいその腕がたまらない。
 わたしはバトルもしないので、ここでしかそれを味わえないのだ。
 獰猛で気高い彼を独占している、そう震えるのはとても気分が良いのだ。
 ダンデはわたしの指先を握る。
 「もう会えなくなるのか?」
 「身を固めろって言われてるからね。セフレとしてはもう会えないねぇ」
 彼は息をするのと変わらない様子で、そうか、とだけこぼす。
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明日からは眠るよ
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