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ネズ


幼なじみの子持ち夢主とネズさんを書きたかったけど心が折れたやつ。


 赤子の鳴き声がスパイクタウンの路地に響く。
 この小さな街で子どもが生まれるなんて大イベントをしばらく聞いていなかったネズは眉を潜めた。お世辞にも子育てに向いた街ではないだろう。いつも薄暗く、シャッターを下ろした店も多い。パンクロックが響き、ネオンが輝く。実情はさておき、見た目だけなら治安も良くはなさそうに見える。
 「ほらほら、泣かない。もうすぐお家だからねぇ」
 その声がどこか懐かしく耳に残った。
 思わず視線を向けると路地から若い女が赤子を抱えて出てくる。
 ミモザイエローのフレアスカートと白いブラウスがスパイクタウンにミスマッチだった。抱えられた赤子はすでに泣き止み、まあるい頬にはなみだの跡だけが残る。
 彼女はネズに気がつかないまま建物に入っていった。
 なるほど、懐かしいわけだ。



 それから3日ほど後のことだ。マリィが驚いたように、アニキ!アニキ!とオレを呼んだ。
 そんなに興奮してオレを呼ぶことなんて滅多にない。
 「なんですか?」
 「お久しぶりです。ネズくん、元気だった?」
 今日はライトグリーンのブラウスにデニムである。記憶より少し大人びた真冬が自宅の前にいたのである。
 「…お久しぶりです。元気ですよ。そちらは、」
 「わたしも元気よ。この子、紹介するね。わたしのかわいい子」
 真冬はベビーカーできょとんとしている赤子に視線を投げた。釣られてネズも視線を合わせれば、なるほど、目の形がよく真冬に似ていた。
 「女の子ですか?」
 「よくわかったねぇ。かわいいでしょう」
 「かわいいですね」

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