蛭魔とファンファーレ
ワードパレットリクエスト
高い太陽の光が彼の髪に反射する。人工的な金髪は傷みがあるけれど、きらきらと光っている。鋭い目つきに射抜かれた瞬間、電撃でも走った様だった。痺れた心臓はいうことを聞かない。
なんて事ないはずなのだ。彼の部屋に入るのは初めてではない。珍しくカーテンが開いていた部屋で、彼は眠っていた。規則正しく眠る彼に思わず声をかけてしまった。こんな珍しいもの、もっと眺めておくべきだったか。瞬きを数回。射抜かれる。
蛭魔との付き合いなんてもう片手を超えているというのに、なんだ、これは。
「なんだ、テメェか」
「……なんだって、何よ」
貴方が呼びつけたんじゃない。
ダルそうな声を出す。無防備に彼が眠っているところなんて、たぶん初めて見た。まつ毛が伏せられ、散弾銃のように悪辣を発する薄い唇を閉じていた。
足元に散らかった書類を勝手に集めていく。来るたびにこうしているのに、いつも元通りだ。
「入ってきたのがわたしで良かったわね」
「他のヤツなんて上げた事ねぇよ」
わたしは手を止めた。
背中に嫌な汗が流れる。心臓も、それから毛穴も好き勝手してくれる。急に喉が渇いた気がする。
「顔、上げろよ」
幼なじみに良く調教されているわたしは言われるがままだ。油の差されていないブリキのおもちゃのようにぎこちなく、彼に視線を向ける。
「真っ赤じゃねぇか」
満足そうにわらう表情がやわらかで、目のやり場に困った。
ファンファーレが鳴る。