目を細める阿含

ワードパレットリクエスト


 金剛阿含という男のことを考えると、自分が靴底のチューイングガムのように矮小でみっともなくて、無価値な人間のような気がしてくる。彼はなんでも持っていた。彼が望めば、様々なものを差し出す人間も多かったし、わたしもその1人なのかもしれない。
 彼と夜を共にしたのは初めてではない。いつも都合よく寄ってきて、好き勝手に欲望をわたしにぶつける。色々楽しんできた男なのだ。それは、とても好くっていつもどうにかなってしまう。ただ、どこか空虚な気持ちで喘ぐのだ。そして、目を覚ますと彼の香りだけがシーツに残っている。彼はそういう男の子だ。
 ただ、昨日は何かが違った。
「お前が俺で喘ぐのは気分が良い」
 わたしが隣で息も絶え絶えになっているときに彼はそう言ったのだ。
 青筋の浮き出る逞しい腕。ハリのある若い筋肉。わたしを虐めて楽しむ声。彼のどれもがいつもより甘さがあった。知らない。そんな阿含くんなんて、わたしは知っちゃいけない。

 隣でカーテンから漏れる、午前の光を浴びている男は本当に阿含くんなのだろうか。彼はわたしが起きていることに気がつくと、目を細めてわたしを引き寄せた。
「寒いからまだ出るな」
 なんの気まぐれかは知らないが、わたしの心臓はうるさいくらいに主張する。
 初めて彼に残された赤い痕跡を見つけて、奇声を上げることになることを、わたしはまだ知らない。それを聞いて、彼は大層機嫌良さげに笑うのだ。




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