愛妻の日杉元

 彼女の耳元に光る、小さな石は付き合っていた頃俺がプレゼントしたものだ。やわらかな雰囲気の可愛らしい彼女の耳を彩っている。俺は彼女の耳がすきだ。顔に見合って小さくて、耳たぶが柔らかそうで、なにか繊細なものでできていそうな、その耳がとてもかわいい。
「佐一くん、どうしたのこれ」
「今日も俺の奥さんがかわいいなあって思って」
 出会った頃より幾分か暗い色になった髪が耳にかかっている。後ろから回り込んで、指通りの良いそれを少しすくった。ぱちんと、武骨な俺の手から、彼女のきれいな髪へ。まるでそこが本来あるべきところかのように、ピアスと同色の髪飾りが収まっている。
「かわいい」
「でしょ。絶対似合うと思って。ね、これつけてさ、久しぶりにデートしようよ」
 そう言うと彼女は嬉しそうに目元をやわらかくした。かわいい耳元が少し赤くなっている。
 俺の奥さんは今日もかわいい。


 佐一くんはよく、わたしの横顔を見ている。籍を入れる前から、それこそ付き合う前からよくわたしの横顔を見ていた。
「なぁに」
「いや、髪留め似合ってるなって」
「ありがとう」
 彼のくれたピアスを揺らし、先程彼の着けてくれたバレッタを光らせている。これからどこに連れて行ってくれるのかは教えてくれないけれど、佐一くんはわかりやすいから少しそわそわとしている。わたしの旦那さんはかわいい。
 そわそわと、わたしの横顔を、一点をちらりちらりと見ている。今日の佐一くんは黒のチェスターコートを着ていてとても素敵だ。たまに喧嘩もするけれど、何年も一緒にいるのにお互いのことを見つめる目があたたかい。わたしたちはきっと、このまま歳を重ねるのだろう。
 いつもありがとう、なんて素敵なアフタヌーンティーをご馳走してくれる旦那さんの笑顔が今日も素敵だ。




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