「はい、おめでとう」
 朝練が終わり、ホームルームを待つ間の時間のことだ。あいつが机にぽいとそれを乗せた。紫色の薄い紙で包まれた拳くらいの大きさのかたまり。隣のクラスのこいつがずかずかと教室に入ってくるのをぼやっと見ていた。誕生日にわざわざ何か用意しているのは、律儀だと思う。
「ああ、ありがとな」
「開けてみ?」
 促されるままに、薄い紙の包装を破る。
「おい」
「かわいいじゃん。わたしとオソロよ。オソロ」
 わざわざ鞄を見せつけてくる。思わずため息をついた。ファンシーな小悪魔らしいキャラクターの小さなマスコットが入っていた。こいつの鞄には似た系統のうさぎも一緒につけてある。雑に持っていたのだろう。ボールチェーン同士が絡んでいた。
「あとね、はいこれ」
 もう一つ包みを取り出した。今度はラッピングも何もないただ白い紙の平袋だ。大型スポーツ用品店のシールが貼ってある。
「怪我しないでね。16歳おめでとう」
 そう言ってあいつはさっさと教室から出て行った。ガサガサと中身を確認するとアイシング用のコールドスプレーとタオルが入っていた。スプレーに試合楽しみにしてると黒いマジックで書いたであろう丸い字が並んでいる。思わず口角が上がってしまった。

 スポーツ用品の礼をしていない事に気づき、次の休み時間妙に恥ずかしがるあいつを探し回るハメになる。まぁ、面倒だが良い日だ。
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