現パロ/とても短い


 その瞳に映る星々が、また、俺を夢中にさせる。バイクの後ろに君を乗せて、勢いだけで連れ去った夜。
 「わたしね、あのひとと別れるわ」
 君は知らないだろう。ずっと、ずうっと上を向いていたから。星降る夜に、その小さなからだで真っ直ぐに立つ君を抱きしめたかった俺を知らないだろう。
 崩れた髪型も、はみ出した口紅も、片方どこかへいってしまった耳飾りもすべて愛しくて、抱きしめたかった。その淡いワンピースを抱きしめたかった。
 海沿いの小さな駐車場にバイクを置いて君の横に立てば、こんなに近くにいるのに、どうして俺を見てくれないんだと思ってしまう。
 先ほどまで背中にぬくもりを感じるほど、近くにいたのにな。
 「今日はありがとう。ふふ、杉元くんのおかげ」
 「いつの間にこんなに良い男になったのよ」
 「杉元くん、体温高いのね」
 「見て。また、流れたわ」
 幾分か低い乱れた頭が流暢に音を紡ぐ。
 君の声が少し震えたような気がした。
 先輩、どうして俺には先輩を抱きしめる権利がないんだろうな。
 涙が落ちないように、流れる軌道を見つめる君がかわいいのににくい。
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