ビートくんとお茶をすると同一夢主
うららか草原でミツハニーを追いかけていた。
今日は爽やかな風が吹き、フィールドワーク日和だ。
アラベスクタウンでカフェを営んでいるわたしは、今日は新鮮なあまいみつをもらいに来ている。
トレーナーでないわたしがワイルドエリアにいるのも少し怖いことだが、まぁ、入り口付近でスタッフさんもいるから大丈夫だろう。
「今日もかわいいねぇ」
「ここでもそれですか」
「いいじゃない。でも、せっかくのお休みをわたしに使ってしまって良かったの」
「あなただけでワイルドエリアなんて」
「ありがとう、心配してくれて」
「別に、心配して」
いつもは1人で回収に来ているわたしを心配してか、新米ジムリーダーが付き添ってくれた。
例のトーナメント以来、益々忙しくしている彼をわたしに付き合わせるのは悪いと思ったが、ポプラさんがビートくんはわたしによく懐いているとかなんとか背中を押してくれて今に至る。
「けっこう集まったし、お昼にしようか。ビートくんはキャンプでカレーとカフェでランチ、どっちが良い」
「カレーで」
「オッケー。じゃあきのみも調達しようか」
せっかくだしビートくんのポケモンたちにも振る舞いたい。それなら沢山集めなければ!
どうしてこう、気合を入れると空回りしてしまうのだろうか。
わさわさと実りのある木を選んで揺すっていく。そりゃあみんなきのみ目当てで集まってきているのだ。3本目の木を揺すっている時だった。
「きゃ!!!!」
丸々とした大きな影が落ちてきた。思わず大きな声を出してしまい、それに影も驚いたようだ。わたしをキッと睨みつけて臨戦態勢である。どうしよう。わたしはポケモンを連れていないし、目の前のポケモンはわたしの目をじっと見ている。
「やっぱり、一緒に来て正解でしたね」
その声とともに、ぽーんときのみをいくつかポケモンの方へ放った。ポケモンは放られたそれに夢中だ。
「…ありがとう。ビートくんがいてくれて助かったよ」
「本当に、気をつけてください。ボクがいなかったらどうする気だったんですか」
「…大声でスタッフさんを呼ぶとか?」
「ヨクバリスを刺激するでしょう!」
はぁ、とため息をつくビートくんに情けなくなってしまう。大人ぶってる割にこんな調子なのだ。
「そんなに落ち込まないでください。次から気をつけてください」
「うん」
「今度から、ワイルドエリアに出る時はボクに声をかけてくださいね」
「でも、お仕事、」
「でも、じゃないです。ボクもあなたのお店で過ごす時間がすきなので、そのためならこれくらいなんて事ないです。さぁ、わかったらカレー、作りましょう」
ビートくんに差し出された手にそっと重ねると、彼はぎゅっと握ってきた。
トレーナーではないわたしは、ワイルドエリアではビートくんに頼らせてもらおう。アラベスクタウンにもどったら、思いっきり甘やかそう。