ガラル、ジムチャレンジなどについての捏造を含みます。


 ここガラル地方においてジムチャレンジは国をあげたお祭りである。毎試合勝者と敗者がいてドラマがある。スタジアムや自宅、スポーツバーで手に汗を握り応援をする。経済効果も馬鹿にならず、ジムリーダーのコラボアイテムは飛ぶように売れ、レアカードは高額転売されたりといった具合だ。
 ジムチャレンジにおいてトレーナー、ジムリーダー、チャンピオン、ポケモンたちの他に大いに場を沸かせ、経済を回す存在がいる。

 「あきらです〜!今日も応援がんばっちゃうよぉ。みんないぃっぱい声出してねぇ!!」

 あきらの職業はアイドルである。8人組人気グループの黄色担当だ。
 ぴかぴか元気がトレードマーク!現場にかみなり落としちゃうよ!でおなじみである。
 歌って踊ってジムチャレンジやトーナメントを大いに盛り上げていく。黄色のミニスカートからのぞく生足が眩しい。長い手足を大きくしなやかに動かし、キレのあるダンスと振り向きざま笑顔で観客をメロメロにしていく。

 「おはようございます!今日はよろしくお願いいたします。こちら差し入れのカヌレです。よろしければスタッフの皆さんとお召し上がりください。試合、とても楽しみにしています!」
 あきらは現メンバーの中で最年長となっていた。といっても1つ下に青色とオレンジがいるのでそう歳の離れたメンバーばかりではないが。なんとなくその時の最年長がリーダーシップを取るのがこのグループの形式である。
 「ありがとうございます。妹がすきなところだ」
 「何個か余ると思うので、ぜひマリィ選手にも。ご迷惑でなければ応援してますとお伝えください」
 「ありがとうございます」
 ネズにカヌレを渡すと少し小さな声でそう伝えた。
 外行きの笑顔でその場を後にする。
 
 格好よかった!!!ネズさん、何回会っても好きを更新させてくる。あの不健康そうなビジュアルが良い。素っ気なく見えて熱いバトルをするところも、妹さん思いなところも良い。好きしかない。
 控室に戻ったあきらは1人にやけてしまう。それを青色担当がいつもの発作ね、と軽く流す。
 「ポケスタでマリィ選手が推してたカヌレ、朝イチで並んで良かった。その甲斐があったよ」
 「良かったわねぇ」

 ネズのファン歴はあきらのアイドル歴より長い。まだグループの名が売れていなかった頃はこっそりスパイクタウンまで足を運びライブの熱にうかされていた。群衆と一緒に黒と安全ピンを見に纏い頭を振ったり、拳を突き上げたりしていたものだ。
 現在も好きは変わらず、むしろより厄介な感情を飼っていることにあきらは気がついている。ただ、軽率に彼のライブに行けば元気で明るい、パワフルなイメージのアイドル像を崩しかねないし、何よりプライベートのあきらにネズが気づきでもすればもっと欲を出してしまうだろう。
 他のファンのように直接応援できずともこうしてたまにご挨拶と差し入れを持っていく生活ができるのだ。それをしあわせだと思えば救われる。

 今日はシュートスタジアムでのイベントで数名のジムリーダーが出席していた。ネズもその1人である。あきらのグループはこのイベントの前座や会場整備時にパフォーマンス、またメンバーによっては解説席に行ったりと大忙しだ。
 応援席にわかりやすい一団を見つける。
 ブラックとパープル。袖の破れたようなパンクな出で立ち。エール団である。
 今回はたまたまあきらはネズ側の応援担当になっていた。彼らの下でネズの背中を押すのが今日の仕事である。
 「あきらさん」
 「こんにちは、マリィ選手」
 少し緊張したような面持ちで声をかけられて振り返る。
 「ユウリ選手もこんにちは。ネズさんの応援?」
 マリィの隣からもこんにちは、と帰ってくる。マリィと応援を共にするのは初めてではないのだが、彼女があきらに声をかけてきたのはこれが初めてだった。
 「わたし、今日はネズさんの担当なので盛り上げられるようにがんばるね!みんなでブロッキングポーズきめよう」
 ユウリは笑顔で、マリィは少し恥ずかしそうに腕をクロスさせたる。エール団もそれに倣ってクロスさせた。
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