オーマイダーリン!?

「はい、お弁当」
「いつもありがとな」
「ううん、自分の分を作るついでだから気にしないで」


警視庁公安部のフロアにて。12時を少し過ぎたころ、いつもの場所で景光にお弁当を渡す。同じ庁舎で働く幼馴染にお弁当を届けるのが、いつの間にかわたしの日課になっていた。彼の仕事柄、直接渡せないことも多いが、そういうときは心優しい上司や同僚に託させていただいている。とてもありがたい。


「お前の作る弁当、ほんとに美味しいんだよなあ」


同僚にも羨ましがられちゃってさ、なんて。まるで子どもみたいな笑顔で言うものだから、わたしもつられて笑ってしまう。


「よーし、明日はもっと美味しいもの作るね!」
「楽しみにしてるよ」


そんなやり取りをしていたら、『景光はいいよな〜、毎日のように愛妻弁当が食べれて。羨ましいよ』という声が聞こえてきた。通りすがりの同僚さんたちだ。冗談だとは分かっていても、"愛妻"だなんて言われたら照れてしまう。とにかく違うって言わなきゃ、と焦るわたしを遮るように彼が口を開いた。


「"まだ"奥さんじゃないけどな」


まだ!?まだってどういうことなの景光くん!?テンパるわたし(となぜか同僚さんたち)をよそに、幼馴染は余裕の笑みを浮かべていた。



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bkm