眠りの森の王子様

「松田せんぱーい、起きてください。朝ですよー」
「……あと5分」
「それ5分前に聞きました」


松田先輩は朝に弱い。これは彼の家にお泊まりするようになってから知ったこと。こうなると起きるまで30分はかかる。彼とわたしの攻防戦の始まりだ。


「今日は遊園地に行くって約束したじゃないですか!こんなことしてたらあっという間にお昼になっちゃいますよ!」
「まだ10時だろ……全然余裕……」


久しぶりのデートだというのに、この調子だ。仕事柄、疲れも溜まっているだろうし仕方ないのだけれど。それでもやはりせっかくのデートだ、時間いっぱい楽しみたいのが乙女心というもの。


「5分経ちましたよ!いい加減、起きてくださ
「……ちょっとお前一回黙ってろ」


少し不機嫌そうな声が聞こえたと思ったら、布団の中に引き戻される感覚に襲われる。そしてわたしの抗議の声は、強引に奪われた唇に溶けていった。



prev next

bkm