脳がキャパオーバーしました

さてさて、鬼灯さんについてきて辿り着きましたるはやけに広い空間。なんて言うんだろう、御殿みたいな。いや、御殿なんてどうでもいいや、この際。そんなことよりわたしは目の前のデスクに座っている巨大な人に目が釘付けなわけで。なんだこの巨人。開いた口が塞がらないというのはまさにこういう状況のことを言うのだろう。


「あ、鬼灯君。この子が例の子?」

「ええ、こちらが例の彼女です」


厳めしい見た目とは裏腹に、のんびりとした口調で鬼灯さんに話しかける巨大な人。その声色に少しだけ恐怖心が和らいだ気がする。

というか「例の」ってなんだよ。人のことを某魔法学校に出てくる「例のあの人」みたいに言わないでください。わたし闇の魔術とか使えないから!なにやら話し合っている2人を眺めながら、そんなツッコミを入れていると、鬼灯さんがわたしのほうへ向き直って口を開いた。


「それでは本題に入りましょうか。名前さんも色々と戸惑っていることでしょうし」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「まず最初に、貴女のいるこの場所ですが、単刀直入に言うと地獄です」

「あーはいはい、地獄ですか……って納得するわけないでしょ!?地獄!?はあ!?」

「鬼灯君、これノリツッコミってやつじゃない」

「そうですね。一般人がノリツッコミするのは初めて見ましたよ、感動です」


おおー、と声を揃えて感心する2人。しかもパチパチと拍手までしてくれている。いやいやいや、拍手とかいらないから。そんなことよりちょっと待って。ここが地獄ということは、仮にもそれが事実なのだとしたら、わたしは死んだということになる。現実的に考えてあり得ないだろ。なるほど分からん。わたしの脳は考えることをやめた。


「わたしにも理解できるように分かりやすく説明してもらってもいいですか」

「私はそのつもりでしたよ。まあ、貴女はノリツッコミしたり自問自答したりして勝手に盛り上がっていましたが」



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