「政宗さん。」


少し潤んだ恥じらいという感情を含んだ瞳。その睫を少し伏せて、尚且つ瞳は此方を向いている。所謂上目遣いだ。頬は僅かに紅く色付き少女を艶やかに演出している。


「Ah?何だ、深零?」


何だ、と聞かれ少女は少し言いよどむが意を決したように大きく息を吸い込んだ。


「勉強を、教えて下さい。」

「okay.またEnglishか?」

「…はい。」


勉強は、大体出来ると思っている。平均の評定が4.5な位だからクラスや学年では結構良いところを行っているはずだ。しかし、私も人間な訳で、苦手な教科の一つや二つある。その苦手な教科の一つが英語で平均評定を下げている原因でもある。日本人が日本語を読めると同時に英語も読めたら良かったのに。というか、世界共通語が日本語だったら良かったのに。…と、まぁ、私の英語嫌いは根っからのモノで、直す術がない。だから、こうしてテスト前になると政宗さんに英語を教えてもらう。…保健体育も一緒に教えようとしてくるけどね!そんな知識は教えてくれなくて結構よ!なんて言うと「本当に知らなくて大丈夫なのか?」と口元をニヤつかせながら此方に身体を傾けてくるので「保健体育のテスト、無いんです」という嘘丸出しな事を言って凌いでいる。多分気付かれてるけどね。


「で?何処が分からないん…「全部です。」…okay.」


しょうがないじゃない、分からないんだもの…


「Ahー…じゃあ範囲を見せてみろ…」






深零ちゃんは竜の旦那に勉強を教えてもらっているらしい。勉強が分からないのなら俺様に頼ればいいのに…。恋のABCからナニまで全部隅まで隈無く教えてあげるのにね。って…なんか旦那がこっちを汚いものを見る目で見てるんだけど!そんな目をするなんてお母さん、悲しいわ!…あ。言ってて悲しくなってきた。


「…佐助おぬしという奴は…」

「なーに旦那。これは俺様の愛情表現なんだからね!誰がなんと言おうと愛情表現なんだからね!」


あれ。旦那、疲れた顔してどっか行っちゃったよ。


「…うわ。」

「わわっ深零ちゃん!いつからそこにっ!?」

「幸村さんが出て行く少し前…」

「もー居たなら声かけてよねー!」

「いや、声をかけたくなかったと言うかなんというか……ほら!汚物って見たら避けたくなるじゃないですか。アレと一緒ですよ!」
「俺様って深零ちゃんの中では汚物と同等なのっ!?そうなのっ!?」

「誰も同等だなんて言ってませんよ。…汚物未満です。」

「汚物にすら満たないって言いたいのね!?」


「はい。」と素直に伝えようとすると猿飛さんは俺様そんな子に育てた覚えは無いわっ!と気持ち悪い位しなを作って走り去って行ってしまった。一体何だったのだろう。


「Hey,深零。」

「何ですか、政宗さん。」

「さっき猿が泣きながら飛び出して行ったんだが…」

「きっと泣きたい年頃なんですよ。泣かせてあげてください。」

「…そうか。」


それだけ言うと政宗さんは部屋に戻って行った。


「あ。ジュースあった。」






教訓3:我が家の同居人の言葉はナイフよりも切れます




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