「深零ちゃん!」

「あっ!佐助君っ!!」


俺様を見つけるなり眩しい位の笑顔を浮かべて此方へと駆け寄ってくる深零ちゃん。そんなに急がなくても俺様は逃げたりしないのに!…ああ、何て愛らしいんだろう。自然と口元が緩んでしまう。そしてその小さな身体を両手で抱きしめる。ふふふっ、俺様幸せ者だなぁ、なんて思っちゃったりしてまた口元が緩んだ。


「あっ、佐助君笑ってるー!わたしも笑うっ!!」


そう言ってふふふっ、と可愛らしく笑う深零ちゃん。その仕草の一つ一つが愛らしくて胸がキュンとする。


「わたしね、大きくなったら佐助君のお嫁さんになるんだっ!!」

「じゃあ、俺様は深零ちゃんの旦那さんだね。」


次第に近くなる唇―――…


キスした後、何だか気恥ずかしくなって2人で笑い合った。









…という夢を見たんだ。まさかの夢オチ…。俺様の幸せを奪ったのは紛れもなく俺様に向けて愛くるしい純粋な笑顔を向けてきた本人。……訂正しよう。"夢の中で"俺様に向けて愛くるしい純粋な笑顔を向けてきた本人である。そう、夢の中で…


「猿飛さん、凄く邪魔。」


…何でだろう。頬を体液が伝ってゆくよ…。俺様大声で泣いて良いですか。ていうか泣かせて下さい。あの幸せな夢の後にこの仕打ちは酷いでしょっ!?せめてもう一回幸せな夢を…


そう思って瞼をゆっくりと閉じようとした瞬間、脳天に肘鉄が降ってきた。


「……何回私に言わせれば気が済むの?ああ、そうか。私の肘鉄が食らいたくてそうしてるのね?それならお望み通りもう一発お見舞いしてあげるわ。」


最後の一言で頭が完全に覚醒した。


「起きるっ!!起きるからっ!!大体女の子が肘鉄なんて食らわせたら駄目でしょうがっ!!もうちょっとお淑やか…いや、暴力だけは止めなさい!いや、止めて下さい切実に!!」


最後の方は確実にお願い事になっているが当の本人は必死になりすぎて気付いていない。


「猿飛さん、可哀想。」

「どこがっ!?」

「いや、なんか…ねぇ…?こう…頭…?いや、頭の中と言うか…まぁ、見た目もなんだけどね。」


ああ、本当に、泣いて良いですか。


夢の中であんなに愛らしかった彼女は現実ではこんなにもドライで毒舌でした。願わくば、もう一度、あの夢が見たいです。


「夢の中の深零ちゃん、幼くて可愛かったなぁ…俺様の事"佐助君"って呼んでたし…」

「…私の目の前に居るロリコンは自害するか幸村の手によって焼かれて下さい。」

「深零ちゃんが直接手を下すことはしないのっ!?」

「いや、なんか触ったらばっちぃ…」


ばっちぃってなんか凄く可愛いっ…!!


「なんだか悪寒が…」

「気のせい、気のせいっ!」






教訓1:我が家の同居人の前で居眠りは厳禁です




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