03. 「雛野さーん!放課後だよ!井浦だよ!一緒に帰ろー!」 「緑なんてお呼びじゃないのよ!」 「ひど!堀さんひど!傷つきうら!」 緑の彼、井浦秀が教室に入ってくると同時に女王様から浴びせられる罵声と言ったら見事の一言につきる。 「井浦は雛野さんと帰るの!」 「残念だったな、緑に雛野さんはやらん。」 「仙石さんまでひどいうら!」 「うるさい、緑。」 「もー!みんな井浦を何だと思っているのさ!雛野さん帰ろぉ…」 そう言ってわたしの手をとって教室を飛び出した。 「全く、みんなひどくない?井浦なにも悪くないのにさ!」 「はいはい。井浦はちょうよいこ(笑)だよ」 「ちょ、雛野さん(笑)ってなに!?(笑)って!」 「あははは。」 「笑って誤魔化さないでえええ!」 なんとなく、繋いでいた手を離すと井浦が少し寂しそうな顔をした。 「なに?井浦さみしうら?」 「だってえー雛野さんが手ぇ離すからぁー」 「もー夕方だねえ…」 「話そらすしぃー」 「あ、今日の夕焼け綺麗だね。」 振り向いて井浦のほっぺをつついてやるとむーとかんーとか唸っていた。 「なに、井浦どうしたの?」 「…、ほんとは分かってるくせに。」 「分かりませーん。」 「やだこのドS!」 このままだと井浦が泣き出してしまうので仕方なく手を繋いであげた。 「…へへへ。」 「幸せそうな顔しちゃってー」 「うん。幸せだからね。…雛野さん大好き。」 「…ばーか。」 「ちょ、馬鹿ってなに!?井浦馬鹿じゃないよ!」 「うるさっ!耳許で叫ばないで!うるさうら!」 夕暮れに手を繋ぐ |