「…見えない、かぁ…」



分厚い雲で覆われた空を見つめ、溜め息と一緒に言葉を吐き出す。



「流星群ですか?」



背後から声を掛けられ振り向くと、そこにはよく見知った人間。木ノ瀬梓。



「そうなの。けど、この分厚い雲じゃ無理かな、って思ってさ。」



「確かにこの雲じゃちょっと無理そうですね…」



残念です、と前髪をいじりながら呟く。



「今年ってさ、流星群あんまり見れなかったよね…」



「そういえば、そうかもしれませんね。」



実際今年は丁度流星群の日に雨が降ったり曇ったりと天候に恵まれなかった。



「なんかちょっと…寂しいなって思ってさ…」



「うーん…確かに寂しいですけど、来年に楽しみをとっておける気がしませんか?」



驚いた。まさか梓君の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったので、口をぽかんと開けて数秒間フリーズしてしまった。



「…ちょっと。深零先輩。失礼ですよ。」



どうやら何を考えていたかバレてしまったらしい。まぁ、あれだけ間抜け面していたらバレても仕方ないか…



「折角人が落ち込んでる深零先輩を優しく励ましてあげようと思ったのに…」



そう言って、頬を膨らませそっぽを向いてしまった。そんな仕草が可愛くてつい笑ってしまう。



「全く…」



「ふふっ…ごめんねっ…」



「…反省する気はあるんですか…」



独り言の様に呟き此方を見る。その表情が先程のとかけ離れすぎて一瞬ドキリ、と胸が音をたてた。



「…来年。一緒に流星群を見ましょうね?僕が付いていればきっと晴れますから。」



どこから湧いてくるのか、なんの確信も無い言葉。だけど今はその確信もなにも無い言葉が酷く頼もしかった。




(しょうがない、信じてあげよう)



その






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