雪が一晩のうちに巨大な壁が出来る程、降り積もっていた。


「…寒い、死ねばいい…」


「こら、深零ちゃん!女の子が死ねばいいとか言わないの!」


そう言って軽く頭を小突かれる。


「いてっ…おかーさんが叩いたー…」


「誰がお母さんだって?」


「いや、それはさす…

「ん?」

…何でも無い。」


そう答えれば、宜しい、と満面の笑みのおか…佐助。笑顔が黒い。


「しかし、こんなに積もっちゃって…どうしようかね…」


流石に積もりすぎだ、と思ったのか佐助は考え始めた。

しかし、何でだろう。
先程からいやな予感しかしない。


そして、何かを閃いた様に此方の方を勢い良く向く佐助。


あ、嫌だ、逃げたい。


「深零ちゃん!!雪合戦しよう!!」
「嫌だ!!」


即答だった。
この世で嫌いなものベスト5に入る雪合戦。そんな物を誰が好き好んでやるか。


「良いじゃん!俺様雪合戦好きだよ!やろうよ!」


「嫌だ!!無理!!私はインドアな事がしたいの!雪合戦好きとか言う佐助は嫌いだよ!」


「き…嫌いって…」


勢いで言ったのだが、言われた本人は相当ショックだったらしく、部屋の隅でいじけ始めてしまった。
茸が生えてくるんじゃないか、と心配する程の落ち込み方だった。


「…佐助?」


「なにさ、嫌いなんでしょ?」


ダメだ。
完全に拗ねてる。
どうにかして機嫌を戻せないか…


外には沢山の雪―――


ああ、そうだ…












なにさ、深零ちゃん…
俺様はただ、楽しく遊びたかっただけなのに…深零ちゃんの笑顔が見たかっただけなのに…

ああ、俺様らしくない。
こんなに落ち込んだりするのはきっと、深零ちゃんだから。
それ程、大切な…彼女…


悶々としていたら突如やってきた頬への冷たい刺激。
いきなりの事に驚き、口から悲鳴に似た声が漏れた。


「ぷっ…佐助…何、今の声…ぷくく…」


「何って…深零ちゃんがいきなり驚かすからでしょ…」


深零ちゃんが手に持っていたのは可愛らしい雪兎。それを頬にくっつけたらしい。


「全く…何してんだか…」


「佐助が…」


「ん?」


「佐助が、寂しそうに、してたから、…雪で遊びたいのかと思って…」

だから、佐助の為に、作ってきた。


ああ、この子は何て可愛いのだろう。
考えるより先に身体が動いた。


「さすっ、」


「もー、深零ちゃん可愛すぎでしょー…ホント好き、大好き…」


「……。それだけ?」


「まさか。」


愛してる、そう言って唇に一つ、キスを落とした。






白の世界で



「私も愛してる!」





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