「―――い。おい!」 「え、うわ、なに?」 「なに?じゃねぇよ!さっきから話しかけてんでぃ。」 「あ、ごめん。聞いてなかった、かも」 「かも、じゃなくて聞いてなかったじゃねぇかよ…ったく…人が折角説明してやってるって言うのによぉ…」 「あはは、ごめんって…もう一回お願いします…」 「…次はねーぜ?」 総悟は時々こうやって私に勉強を教えてくれる。けれど、それは総悟が部活で遅れる彼女を待っている間の話。それ以外の時は話すことは疎か、目線さえ合わせてくれない。それでも、私はこうして総悟と二人で居れる時間が好きだ。限りある、この時間が。 「―――っと。いけねぇ。時間だわ。じゃあな」 「あ、うん…」 言葉の後ろに続くはずのまたね、を言う前に総悟は出て行ってしまった。 「……、またね」 ポツリ、誰も居なくなった教室に小さく反響した。 遠くで聞こえるバタバタと遠ざかっていく総悟の足音を、私の恋と同じだと思った。 「ねぇ総悟…ごめん、好き。」 もう、涙なんて出てこないよ。 だって、私はあなたの、 ---------------- 企画「ごめん、好き」様に提出 |