今必死に覚えようとしている、この公式達は果たして将来、役に立つ日が来るのだろうか。否、世間一般的な主婦業に徹するならば役に立つ日が来る所か思い出しもしないだろう。つまり、今現在している事は全くの無駄、という事だ。


「…てな訳でね猿飛先生。私は課題を終わらせません!」

「終わらせません!じゃ、ないでしょうが!」


言うが早いか分厚い教科書の背表紙の角を脳天に叩き落とされた。


「あたっ!ちょ、先生!!それ、体罰だよ!教育委員会に 訴 え る よ !」

「体罰じゃありませーん。教科書が自分の意志で飛んでいったんでーす。」


そう言って再び深零の脳天に教科書を叩き落とした。


「あたっ!…はい先生!!教科書は無機物なので意志が無いと思います!というか、無いです!マジで訴えていいですか!」

「はい雛野!!今、テスト前日にも関わらず、授業中爆睡していた雛野の為に丁寧に、凄く丁寧に公式を一から教えてあげているのは何処の誰ですか!」

「猿飛先生ごめんなさい!!」


思いっ切り頭を下げた所為で頭が机にダイブし、ゴンっと言うなんとも眉をしかめたくなる音を奏でた。雛野が何か言いたげな目で此方を見てきた。…うん。つまりは痛いのだろう。


「うぅ…体罰だ…虐待だ…セクハラだ…」

「はいはい。ってセクハラは違うでしょ…俺様いつ雛野にセクシャルでハラスメントな事したって言うのさ…」


あ、なんか視界がぼやけてきた。おかしいな。


「先生は存在がセクハラだと思います!」

「うん、雛野は存在が馬鹿なんだね!」

「ちょ、やだ先生。そんなに誉めないで下さいって!照れるなっ…!………分かりました、分かりましたからその下等生物を見るような哀れみを込めた目で私を見ないで下さいっ!」


目を逸らす変わりに大きなため息を吐いた。





或る晴れた日の課後






「何でだろう、凄く疲れた。」
「わぁ、猿飛先生それは大変ですね。きっと日頃の行いが悪いんですよ。」
「テスト、赤点だったら留年な。」
「ちょ、職権乱用…!……でもまぁ、先生と一緒ならいいかな、なんて。…あれ?先生熱あるんですか?顔赤いですよ?」






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