保健委員、というのは実に面倒な仕事で。
怪我をする可能性のあるイベントでは必ずと言って良い程保健室に居なければならない。しかもこの学園はどうしてこうなったか怪我人が異常に多い。看病するこっちの身にもなってほしいものだ。
分単位で運び込まれてくる怪我人を横目にこっそり溜め息を吐いた。

(……にしても、これは多くない…?)

去年まではこんなに運び込まれなかった筈だ。

(体育館でどんな熾烈な闘いが繰り広げられてるのよ…!たかが球技大会でしょっ…!)

たかが球技大会、されど球技大会なのだ。

(同じ保健委員のお市ちゃんは一体何処に行っちゃったのよっ……大方予想はつくけどね!これだからリア充は…!)

学園の美男美女、と言えば必然とお市と浅井長政を指す事になる。学園のバカップル、と言えばこれもまた必然とお市と浅井長政を指す事になる。つまり2人は学園の美男美女であると共に、カップルでもあるのだ。

そんなバカップルの片割れがもう一方の応援に行かないはずが無くて…

(お市ちゃん普段は真面目なのに浅井先輩の事になるとね…)

お市は今、浅井を絶賛応援中なのだ。

そんな事を考えて本日二度目の溜め息を吐いた。

「おやおや雛野さん?そんなに溜め息ばかり吐いていると幸せが逃げてしまいますよ?」

クククッ…と言う不気味な笑い方、そしてこの背後に立たれると背筋が凍る感覚。この人は……

「……明智先生…何してるんですか…?」

ついでに背後に立たないで下さい、と言う言葉はすんでの所でなんとか飲み込み、振り返って笑顔で応える。
少し口元が引きつってしまったのはご愛嬌。

「何…?何って…怪我人の手当てに決まっているでしょう…?私は保健室の先生ですからね。全く…貴女は何を見ているのですか…?」

若干馬鹿にされた感じがあるが、そこは私のスルースキルで華麗にスルーした。

「で、その怪我人の手当てをしているハズの先生は何をしにこちらに来たのですか?」
「ああ、貴女が面白くて忘れる所でした。」

…………私はこの変態に喧嘩を売られているのだろうか。よしそれなら買ってやろう。

「あぁ、早まらないで下さい。私は貴女と喧嘩するつもりはありません。ただ少し保健室を開けると伝えに来たのです。」
「……は?」
「では、頼みましたよ。」

何故考えが読まれているんだとかこんな忙しい時に何を言っているんだとかそういった考えが頭の中をグルグル回って一発殴るという考えに落ち着いた時、奴はもうそこに居なかった。

……先生の椅子に画鋲でも埋め込んでやろうかしら。
無数に。






(呪い的復讐)


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