あの保健室の日からも隣の席のアイツは私に普通に話し掛けてくる。

だけど、話し掛けられると何故かよく分からない感情が胸をジャックする。

理由はきっと、アイツに関わりたくないから。
それ以外考えられない、考えたくない。






「深零ちゃん!次、移動教室だよ!一緒に行こ…「私、かすがと行くから。」

わざと冷たく言い放つ。

冷たく言うのは、関わりたくないから、なのに。

何で、そんな―――

「…、かすが!行こ。遅れちゃう。」
「あ…ああ。」

アンタが泣きそうな顔、するのよ。

また胸がよく分からない感情にジャックされる。
だけどその顔はすぐに人受けの良い笑顔にすり替わる。

「じゃあ、俺様は旦那達と行くから。」

無意識に下唇を噛み締める。




「…深零、私が言うのも何だが…」

先を歩く私に話し掛けるかすが。
その先の言葉は予想がつく。
優しい、ね。

「どうしたの?かすが」

だけど、振り返った私は嘘吐きの笑顔を貼り付けていて。

かすがの優しさは、私には優しすぎる、よ。

「……なんでも、ない。」

ごめんね、心の中で呟いた。

かすがの優しさに心が、泣いた。嘘吐きの自分に涙なんて似合わないから、心が変わりに泣いた。どうしようもないこの痛み。皆の優しさがナイフになって心を抉る。

いっそ、封じ込めてしまったら楽なのかもしれない。

この切り捨てたい胸を支配する感情と






(痛みを)


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