一番左の一番後ろ。

そこが私の席。

その席から教室を見回して人間観察。

あ、伊達くん、また雑誌読んでるいつも何読んでるのかな……私は何も見なかったよ。人妻が載ってる肌色多めの雑誌なんて見てませんよーっと。
あ、真田くんまた早弁してる…毎回見つかってるのに。懲りないんだから…

そんな事を考えて1日を過ごす。うちのクラスには変…変わっている人が多いから授業中も退屈にならない。そして周りの子達は身長が高くて先生の位置からは私が見えない。
だから注意される事は無い。

そんな日々を神様は見ていたのかもしれない。

だから、こんな事になってしまったのだろう…





――――そう、席替え。


その私が最も恐れていた席替えが今、実行されようとしている。

「私なら大丈夫。絶対に今までと同じ席になれる…」

ブツブツブツブツ……

「私ならだいじょ…「なぁ〜にさっきからブツブツ言ってんの?」ぅわぁ!!」

くじ引きの列に並んでいたら後ろからいきなり話しかけられた。

「うわあって…傷つくなぁ…」

"関わりたくない人。"

そんな言葉が頭をチラつく。

「あはは…どうしたの?猿飛くん…?」
「もーいつも佐助でいいって言ってるでしょ?他人みたいじゃないの、深零ちゃん」

眉を下げて悲しそうな顔をする彼。

私は心の中で他人じゃないか、と毒づく。

けれど顔には決して出さない。

「あ、ほら、次。順番だよ」

そう言われて前を見ると前の人がくじを引き終わっていた。

箱の中身を思いっ切り引っ掻き回してコレだ!と思ったクジを勢いよく引いた。

「………やったぁ……」

前と同じ、一番左の一番後ろ。

(なにこれ、私凄い!!神の右手だよ!!)

「じゃあ席、次の授業までに動かしておけよー。以上。」

そう言って担任はチャイムの鳴り響く中教室を出て行った。

「さて…私は席動かさなくていいし。お隣さんはだっれかなー?」

自分が安全になった途端、席替えを楽しみ始める。それが私。

現金だよなー、私って。

ガタガタ…

どうやらお隣さんが来たようだ。

誰だろう――――

「あ、隣深零ちゃん!?ヤバッ、俺様今日の運勢最高なんじゃ…」

………は?

「ぬ、後ろは雛野殿で御座ったか!これから宜しくでござる!」

………え?

「Hey,honey!この俺が斜めだなんてluckyじゃねぇか!」

………ん?

あれ?おかしい。いやいや。あり得ないって。うん。きっと幻覚幻聴だよね。

そうに決まってる。

目を閉じて、ゆっくり10数えよう。そしたらきっと現実が、私に優しい現実が見えるはずだから!!

1、2、3、4、5、6、7、8、9、…10…

「ん?どうしたの深零ちゃん?もしかして、俺様誘われてる?」
「雛野殿、どうかなされたか?」
「Hey,honey?目なんか閉じてどうかしたのか?」




………ああ。神様。私の平凡な日常を返して下さい。






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